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大津地裁、関西電力・高浜原発3、4号機の再稼働差し止めへの関電側の異議却下。「規制委の基準適合だけで安全性確保といえない」(RIEF)

2016-07-13 10:41:00

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 各紙の報道によると、大津地裁(山本善彦裁判長)は12日、関西電力高浜原発3、4号機(福井県高浜町)の運転差し止めを命じた三月の仮処分決定に対して、関電が取り消しを申し立てた異議を退ける決定をした。これで仮処分の効力が今後も維持されることになり、2基は法的に運転できない状態がさらに続く。

 

  関電はこの決定を不服として大阪高裁に抗告する方針。大津地裁は6月には仮処分の効力を一時的に止める関電の執行停止の申し立てに対しても退けている。関電は運転禁止の期間が長期化するとみて、2基の燃料を8月に取り出す方針で、同原発の再稼働は当分見通せなくなった。

 

 今回の決定を出した3人の裁判官のうち、山本裁判長を含む2人は3月と6月の決定も担当している。一般に仮処分に対する異議は別の裁判長が審理するが、大津地裁の民事部で裁判長を務めることのできる部総括判事は山本裁判長1人のため、引き続き受け持っていた。

 

 決定理由で山本裁判長は、2011年3月の東京電力福島第1原発事故の原因究明が完全には終わっていないとし「(事故後に国が策定した)規制委の新基準に適合したことだけをもって安全性が確保されたとはいえない。新基準の合理性や2基の適合性を関電側が説明するべきだ」と指摘した。

 

 さらに原発の安全確保のあり方にも言及。「立地を含めた安全性だけでなく、対策の見落としで過酷事故が生じる可能性を前提に、致命的な状態を避ける対策を取ることが必要だ」と指摘した。

 

   そのうえで高浜の2機の安全性について「危惧すべき点や疑問が残るのに、関電は説明を尽くしていない」とした3月の仮処分決定を踏襲、改めて運転を認めないとする結論を示した。

 

また、関電側が「事故発生時の住民側に対する人格権侵害の具体的な危険性が不明だ」と主張したことに対しても、安全性の立証責任は電力会社側にあり、立証を尽くさなければ安全性の欠如が推認されるとあらためて強調した。

 

 「現実に起きた東京電力福島第一原発事故と被害を目の当たりにした国民の社会通念は、原発の安全性の欠如が直ちに人格権侵害を推認させるものになっている」とした。

 

 3月の決定時、さらに6月の執行停止申し立ての却下決定時と同じく、規制委の新規制基準や関電の安全対策などに疑問を示す従来の判断を踏襲した形だ。

 

 高浜原発の再稼働先送りが確実になったことで、関電は厳しい経営運営を迫られる。同社の火力発電依存は2015年度の電源構成比で8割強に達しており、温暖化対策と逆行する企業になっている。

 

 また今後、原発の再稼働を勝ち得るためにも安全対策の強化を進める必要があるほか、老朽原発の廃炉に伴うコスト負担増も出てくる。関電は既存電力の中でも図抜けて原発比率が高かったが、そのツケが経営全体に及ぶ形だ。

 

http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/list/201607/CK2016071302000128.html