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経団連、脱炭素社会に向けた「チャレンジ・ゼロ」宣言。137の企業等が賛同。ただ「温室効果ガス排出のネット・ゼロ」の目標年限は掲げず。原発・石炭火力も温存を前提(RIEF)

2020-06-08 22:19:01

keidanren03キャプチャ

 

 経団連は8日、脱炭素社会に向けてイノベーションを推進する「チャレンジ・ゼロ」宣言を行った。賛同企業(団体含む)は137社を数え、立ち上げた専用のウェブサイトでは、ネット・ゼロエミッションを推進する技術開発やファイナンス等について300以上の取り組みを紹介している。ただ、目標に「パリ協定が目指す温室効果ガス排出のネット・ゼロ」を掲げるが、その達成年度は明記していない。「方向は示したが、スピード感不明」というところだ。

 

 経団連は昨年12月、脱炭素社会の実現に向けた経済界による積極的な取組みとして、今回の宣言の土台になる「チャレンジ・ゼロ」構想を提唱した。欧米の経済界に比べて、積極性に欠けると指摘されてきた日本の経済界が一丸となって、CO2削減のカギを握るイノベーションの推進を軸に据え、存在感を発揮する狙いだ。http://rief-jp.org/ct4/96995

 

 チャレンジするのは3つの分野。①ネット・ゼロカーボン技術(含む、トランジション技術)のイノベーション② ネット・ゼロカーボン技術の積極的な実装・普及③上記に取り組む企業への積極的な投融資、だ。ネットゼロ技術の開発、その実現化、そのためのファイナンスの展開となる。

 

ネット・ゼロに向けた「絵姿」。移行期の後、達成年限が示されていない
ネット・ゼロに向けた「絵姿」。移行期の後、達成年限が示されていない

 

 今回の宣言では、各賛同企業から寄せられた多様なイノベーション事例や案を踏まえて、経産省の外郭団体である地球環境産業技術研究機構(RITE)がネット・ゼロ社会への「絵姿」を試算して示した。それによると、「2030~40年ころ」を移行期(トランジション)と位置付け、その間に投資・国際展開等を支援するとし、グリーンファイナンスと技術支援を両輪として海外展開する構図を示している。

 

 ただ、RITEの試算によると「絵姿」は、各施策の具体的な割合が示されていないほか、達成すべき「ネット・ゼロ」の目標年限も示されていない。2050年をネット・ゼロの目標年限とし、さらにその前倒しも議論しているEUとはスピード感でかなりの隔たりがある。

 

 絵姿で示された「ネット・ゼロエミッションの事例」としては、省エネ、燃料転換・創エネ、CCUSの3分野に分類して、技術・イノベーションの事例を示す。このうち、CCUS(カーボン回収貯留・利用)を3つの重点分野の1つにあげていることでわかるように、既存の石炭火力発電等の化石燃料中心のエネルギー構造の維持を前提に、その改良・改善の技術を「イノベーション」と位置付けている点が特徴だ。

 

ESG投資によるファイナンス支援がカギに
ESG投資によるファイナンス支援がカギに

 

 再生可能エネルギーは、「創エネ」として、原発と同様の「エネルギー転換部門」としてとらえられている。燃料転換とセットの扱いだ。原発については、「安全性・受容性向上」として、安全性の向上によって国民の受容性を高める方針を進めるを崩していない。そのためのイノベーション技術として「次世代軽水炉」「高温ガス炉」「小型原子炉(SMR)」「安全性解析等」と盛りだくさんの取り組みを示している。経団連の「原発推進姿勢」に変わりはない。

 

 経団連は、この「チャレンジ・ゼロ」を政府と連携しながら強力に推進するとしている。各主体がイノベーションを競い合う「ゲームチェンジ」を起こすとともに、「ESG投資の呼び込みや多様な連携を図って、ネット・ゼロの早期実現を目指す」としている。

https://www.keidanren.or.jp/policy/2020/052.html