神戸製鋼、米子会社ミドレックスの直接還元法(DRI)を使った既存高炉の低炭素化で、CO2削減20%を実証。既存高炉からの移行(トランジション)技術として国内でも使用にメド(RIEF)
2021-02-16 15:50:44

神戸製鋼は、既存の鉄鋼事業の高炉からCO2排出量を約20%削減できる技術を実証したと発表した。同社グループの米国のミドレックス社が開発した直接還元法(DRI)の技術を、神戸製鋼の加古川製鉄所化の大型高炉を使った実証実験で確認した。鉄鋼からのCO2排出削減には水素還元技術の導入が脚光を浴びているが、コスト面等での課題がある。神戸製鋼の技術は既存の鉄鋼設備からのCO2排出を削減する移行(トランジション)技術としての効果が期待されそうだ。
神戸製鋼傘下のミドレックス社は、米ノースカロライナ州シャーロット市を本拠とする鉄鋼会社。1983年に神戸製鋼が買収した。通常、鉄鋼の生産は、高炉内で、鉄鉱石と炭素(コークス)燃料を一緒に燃焼させることで生成されるCOによって鉄鉱石を還元する反応でできる。
これに対して、ミドレックスは高炉に頼らず、主に天然ガスを利用して鉄鉱石を還元する直接還元鉄(DRI)技術を開発している。ミドレックスのDRI技術は世界で約80%(還元鉄=HBI=では約60%)のシェアを持ち、世界最大の鉄鋼メーカーのアルセノール・ミダルがドイツで進めている低炭素製鉄プロジェクトにも採用されている。https://rief-jp.org/ct4/93961

今回、神戸製鋼は、エンジニアリング事業におけるミドレックスのHBI技術と、神戸製鋼のAI等の活用技術や、ペレット改質技術などの高炉操業技術とを融合させる形で、昨年10月から加古川製鉄所で実証試験を行った。
その結果、高炉にミドレックスのHBIを多量に投入することで、高炉からのCO2排出量につながる還元材比(高炉で使用する炭素燃料使用量)を安定的に低減することで、CO2排出量を従来に比べて約20%削減できることを確認したとしている。また世界最少水準のコークス比(239kg/t-溶銑)も達成したとしている。

今回の技術導入によるCO2削減コストについては、次のように評価している。
神戸製鋼では「現有する技術を用いたCO2低減策の中では、安価な追加コストでCO2を削減できるソリューションを提供できる目途が立った」と指摘している。また今回は同社のグループ企業の開発技術で実証したが、汎用性のある高炉向けソリューション技術として他社へのマーケティングも目指すとしている。