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三菱マテリアル、セメント工場から排出されるCO2を回収し、炭素回収利用(CCU)技術の実証実験を7月から実施。シナリオ分析結果では全事業に水災リスク(RIEF)

2021-03-29 11:22:16

mitsubishimaerial003キャプチャ

 

 三菱マテリアルは、グループのセメント工場から排出されるCO2を回収し、水素と反応させてメタンを合成する炭素回収利用(CCU)の技術開発のため、7月から九州工場で実証実験を始める。得られたメタン等はセメント製造の熱エネルギーとして再利用するための技術開発も実施する。同社は「2050年ネットゼロ」に資する技術開発と位置付けている。

 

 同社は「脱炭素社会の構築に貢献」を掲げ、グループ全体の温室効果ガス(GHG)排出量を2030年度までに17%削減(2013年度比)、2050年までにネットゼロのカーボンニュートラルを実現する中長期目標を設定した。プロダクト型事業(高機能製品・加工事業)については、30年度までに30%以上の削減を目標とする。目標達成に資する技術としてCCUの実用化を目指す。

 

CCU実証実験の流れ
CCU実証実験の流れ

 

 今回のCCUの実証実験は、従来の省エネ対策や電化では削減が難しい、セメント焼成用キルンなどの高温加熱炉を対象とし、製造プロセスから排出されるCO2を分離・回収、水素と化学反応させてメタン等を合成する技術を検証する。実証実験は同社の九州工場黒崎地区で行う。

 

 将来的には回収したCO2については、メタン等以外の有価物への変換を含め、幅広い用途展開が可能な技術開発を進めるとしてい。セメント事業では、CCUに加え、省エネやオフセットクレジットと合わせて実質ネットゼロの実現を目指す。

 

 シナリオ分析結果では、全事業を通じて、温暖化の進展に伴う自然災害の増大による水災リスクが増加すると試算している。河川氾濫リスクが高い地域での物的損害は、国内で2050年度に現状より約1.1倍だが、2085年度には約4倍に、海外(タイ)は50年度に2.8倍、85年度に25倍に達する。特に4℃シナリオでは、立地拠点の見直し等が必要になるとみている。

 

 移行リスクとして炭素税制度が導入された場合、電力価格上昇やグリーン電力証書の調達額増加等で、総エネルギーコストは2030年度に1.59倍(2019年度比)、2050年度には1.63倍(同)となる。これらのコストを製品価格に転嫁できない場合、収益低下につながるリスクになるとしている。CCUはこうしたコスト低下に貢献する可能性がある。

 

https://www.mmc.co.jp/corporate/ja/news/press/2021/21-0326a.html

https://www.mmc.co.jp/corporate/ja/news/press/2021/pdf/21-0326b.pdf