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日立製作所、グリーンボンドの環境改善効果をIoT技術を使って可視化システム開発へ。「グリーンウォッシュ」の防止と、グリーン性の「見える化」目指す。2024年度に実用化(各紙)

2021-12-18 01:13:13

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 各紙の報道によると、日立製作所はグリーンボンドへの投資によるCO2排出量削減等の効果を、IoT技術を活用して可視化できるシステムを開発、24年度の実用化を目指すという。グリーンボンド投資に見合った投資効果を定量的に表すことで、投資家は環境投資の効果を把握しやすくなり、グリーンボンド投資の透明性の向上につながる。十分な改善効果がない「グリーンウォッシュ」を排除することも可能になるという。

 

 日本経済新聞が報道した。わが国でもグリーンボンドの発行は毎年増えている。グリーンボンドは調達資金の使途が「グリーン性事業」に充当されることを前提としている。このため発行体は資金使途先でのCO2削減や環境負荷の軽減等のインパクトを評価・開示することが求められる。

 

 ただ、わが国のグリーンボンドの基準は環境省のガイドラインのみで、国際資本市場協会(ICMA)のグリーンボンド原則(GBP)の手順をコピーしただけの内容で、実務的に必要なグリーン性の評価・計測基準等は示されていない。

 

 グリーンボンドの基準への準拠性を確認するセカンドオピニオン業者による評価も、手順の評価に限定され、計測等は行っていない。このため発行体企業は、ボンドのインパクトレポートの作成に際しては、手探り状態となっているという。発行時だけで、実際のインパクトレポートは作成しない、「名ばかりグリーン」のボンドも横行しているという。

 

 

 このため長期投資を基本とする機関投資家等は、グリーンウォッシュに巻き込まれることへの懸念もあって、グリーンボンドをはじめとするESG債へに投資に躊躇するケースも少なくないとされる。発行体サイドも、工場への省エネ投資の効果などのデータの収集、分析等のノウハウや担当人材が十分になく、適切なレポーティングに苦慮するケースが多いという。

 

 こうした投資家、発行体に共通する「グリーン性効果」の計測の困難さを克服するため、日立はデータ基盤「サステナブルファイナンスプラットフォーム」を開発、グリーンボンド発行に必要な資料を自動作成できるサービスの提供を目指す。22年度にも日立グループ内の脱炭素のプロジェクトを対象に実証実験を実施し、インフラやエネルギー、鉄道など多様な事業でのシステムの活用を検証する。24年度の事業化を想定している。

 

 想定するプラットフォームでは、資金使途先となる再生可能エネルギーを用いた発電設備や、省エネ設備の稼働データをクラウドに収集して分析し、CO2や使用電力の削減量、売電収入等の各データを項目別に自動的に整理し、表やグラフなどで表示することができるようにするという。

 

 発行したグリーンボンドのグリーン性効果だけでなく、企業全体の環境投資の効果などのデータも収集して、投資家等に向けてインターネットで閲覧できるようにする。計測データについては、ブロックチェーン(分散型台帳)を使ってデータを管理し、改ざんを防ぐとしている。

 

 日立ではプラットフォームでのグリーン性データ分析をサプライチェーンの評価への活用も想定している。すでに、米アップルはiPhoneなど自社の全製品の抱えるスコープ3(サプライチェーン)のCO2排出量を2030年までに実質ゼロにする方針であるほか、トヨタ自動車もサプライチェーン全体でのCO2の排出量削減を目指している。

 

 日立ではこうしたグローバルサプライチェーンを抱える企業グループの脱炭素化のデータ基盤の整備にもプラットフォームサービスを提供することで、金融機関と事業会社をつなぐ役割を担う。すでに、三菱UFJフィナンシャル・グループ(MUFG)と企業の脱炭素支援での連携を決めており、MUFGの取引先にも開発したプラットフォーム・サービスの提供を目指す。

https://r.nikkei.com/article/DGXZQOUC19CJ90Z11C21A1000000/?type=my#AAAUAgAAMA

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