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東京ガス、劣後特約付き「トランジションボンド」198億円発行。資金使途の大半は、本業ガス事業の脱炭素化でなく、再エネ事業等に充当。「トランジション」の定義あいまいさを反映(RIEF)

2022-12-22 13:56:54

tokyougasキャプチャ

 

 東京ガスは20日、劣後特約付き(ハイブリッド方式)のトランジションボンドを発行した。発行額は198億円。調達資金は、国内のバイオマス発電事業をファンドから買収する費用に大半を充当し、本業のガス事業の「脱炭素化」へのファイナンスは5億円にとどまる。ハイブリッド債は、社債の弁済順序が同社の普通株には優先するが、一般債務よりは劣後するため、その分のリスクを上乗せして投資家に相対的に高い利回りを提示できるメリットがある。「本業のトランジション」へのファイナンスというよりも、投資資金調達の性格が色濃い。

 

 同社は今年2月に同社として初めてトランジションボンド(200億円)を発行しており、今回はそれに次ぐ。ボンドの償還期限は60年後と超長期だが、調達額のうち101億円は5年後に固定金利(年0.735%)から、残りの97億円は10年後に固定金利(年1.149%)から、それぞれ変動金利に移行するので、実質5年債、10年債に相当する。

 

 資金使途は①低コストで水素製造に活用できる「水電解用セルスタック開発事業」(1億円)②再エネ電力から合成ガスを製造するためのメタネーション実証事業(5億円)③デンマークでの陸上風力発電事業への出資資金(25億円)④Equis(エクイス)グループが運営するファンドが保有する2つのバイオマスプロジェクトを取得する事業(最大175億円)としている。

 

東京ガスのトランジションファイナンスフレームワークが設定する「トランジション事業」の範囲
東京ガスのトランジションファイナンスフレームワークが設定する「トランジション事業」の範囲

 

 本業のガス事業の脱炭素化に直接かかわるのは②だけといえる。他の事業も脱炭素化に貢献する。だが、化石燃料の天然ガスを本業で大量に使用するガス会社が、求められる脱炭素は、本業の脱炭素化が最大のポイントだと思われる。それが、ファイナンス全体の2.5%でしかないのでは、トランジションと呼べるのだろうか。

 

 同社のトランジションファイナンスフレームワークでは、ガス事業の脱炭素化策として、①カーボンニュートラルLNGの導入、CCUS技術の活用②水素製造の低コスト化開発や革新的メタネーション技術の開発を通じ、ガス体エネルギーの脱炭素化③ガス火力については、再エネ電源と天然ガスを組み合わせてデジタル技術による最適運用・制御を行う④ガス火力の燃料に水素・アンモニアの活用検討を進める――等、多様に説明している。

 

 しかし、今回のトラジションボンドの資金使途で、フレームワークで示す「脱炭素の取り組み」に該当するのは、メタネーション実証事業だけ。しかも、同フレームワークでは天然ガスについて、「産業用分野および発電分野における石炭・重油等から天然ガスへの燃料転換や高効率機器の導入、高効率 LNG 火力の運営等、天然ガスを活用することで、CO2排出量の大幅 な削減に貢献する」として、ガス自体を維持することが経済全体の脱炭素につながると強調しており、ガス事業の本格的な脱炭素化は想定していないようだ。

 

 確かにガスは、火力等での同じ発電量の場合、石炭火力に比べCO2排出量は半分ほどになるとされる。石炭火力が大手を振って稼働しているわが国の場合、ガス火力に転換するだけでもCO2削減に貢献する。しかし、それでもCO2を排出していることには変わりはない。欧州等ではロシアからの輸入ガスへの依存を解消する必要もあり、化石燃料としてのガス使用からのトランジションへの取り組みが進んでいる。

 

 ガス会社が本業のガス事業を基本的に維持しながら、他の再エネ事業等への投資等を「トランジション」と呼ぶようなファイナンスを行うのは、結局、わが国で政府が設定するトランジションの定義があいまいなことに原因がある。経済産業、環境、金融の3省庁は、対象事業を特定するトランジションタクソノミーを設定せずに、政府が認定する「タクソノミー事業」に補助金をバラまいている。さらには、「グリーントランジション(GX)」の名称に切り替え、あたかもトランジションがビジネスチャンスを招来するかのような「幻想」を振りまいている。

 

 トランジションは既存のCO2排出量の多い「炭素集約産業」を低炭素・脱炭素化することが目的であり、すべての産業を対象にする構造転換とは異なる。炭素集約産業を集中的に脱炭素化することで経済全体の脱炭素化が加速され、効率的に脱炭素への転換が図れる。そうしたトランジションは望ましいが、「トランジションボンド」「トランジションファイナンス」の名前を冠しながら、化石燃料事業を延命させる取り組みは、「トランジションウォッシュ」ということになる。さらには「GXウォッシュ」も進みそうだーー。

https://www.tokyo-gas.co.jp/news/press/20221214-01.html

https://www.tokyo-gas.co.jp/IR/stock/pdf/transition_finance_framework.pdf