HOME10.電力・エネルギー |三菱商事。脱炭素の技術開発・普及に絞った「気候テックファンド」設立。浮体式風力発電、SAF、蓄電池等を投資対象に。出資額は4億㌦。将来は最大10億㌦に拡大目指す(RIEF) |

三菱商事。脱炭素の技術開発・普及に絞った「気候テックファンド」設立。浮体式風力発電、SAF、蓄電池等を投資対象に。出資額は4億㌦。将来は最大10億㌦に拡大目指す(RIEF)

2023-05-02 13:46:25

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 三菱商事は2日、三菱UFJ銀行、韓国プライベートエクイティ・ファンドのパビリオン・プライベート・エクイティ(Pavilion Private Equity : PPE)と共同で、脱炭素向けの技術関連企業への投資を行う新たなファンドを立ち上げた。立ち上げに際して投資家の出資ですでに4億㌦(約550億円)を確保した。今後、さらに幅広く出資を求め8億~10億㌦規模に拡大する計画としている。

 設立したファンドは「Marunouchi Climate Tech Growth Fund L.P.」。三菱商事が90.1%を出資する「丸の内イノベーションパートナーズ」がファンドのジェネラルパートナーズ(GP)を務める。他の参加企業の出資は、PPEが5%、三菱UFJ銀が4.9%。
ファンドのスキーム
ファンドのスキーム
 気候関連の技術開発の分野(気候テック)では、脱炭素を実現するための様々な先端技術・ソリューションの開発のほか、経済性を高めるための導入拡大等への投資がグローバルに求められている。一方で、これらの技術開発・普及には一定の時間がかかることから、中長期的な資金供給を供給するファンドの組成が求められている。
 新ファンドはこうした需要に応え、リスクをカバーしながら、技術開発を実用化することを目的とする。投資対象事業は、浮体式洋上風力発電等の再生可能エネルギー事業のほか、再生航空燃料(SAF)等の次世代燃料、蓄電池などの領域を想定している。投資対象は、技術開発をある程度実現し商業化前の新興企業をグローバルベースで選別して出資する。投資額は1社当たり2000万~1億㌦とし、2029年4月までに20社程度に出資する目標を立てている。
 三菱商事は、2021年10月に策定した「カーボンニュートラル社会へのロードマップ」で、2050年のネットゼロを宣言。「中期経営戦略 2024 MC Shared Value(共創価値)の創出」では、「Energy Transformation(EX)・Digital Transformation(DX)の一体推進による未来創造」を成長戦略に掲げており、今回のファンドはそうした戦略の具体的ツールとして位置付けている。
 同社は今回のファンドを含め、2030年度までに脱炭素関連事業で2兆円を投資する方針を立てている。22年には米マイクロソフト共同創業者のビル・ゲイツ氏の脱炭素ファンドに1億㌦を出資している。新たに立ち上げるファンドは、先行する脱炭素ファンドとも案件の発掘や投資などで連携することも検討しているという。
 同社を含め、日本の大手商社はこれまで、石炭火力をはじめとする化石燃料関連事業をグローバルに展開してきた。だが、脱炭素の流れがグローバル潮流となる中で、化石燃料関連事業から脱炭素・気候関連事業へのトランジション(移行)を目指すことになる。ただ、化石燃料関連事業についても、石油・ガスセクターを中心として引き続き関与を続けており、脱炭素戦略の移行への模索が当分、続くことになりそうだ。
 同社では、「三菱商事並びにMIPは、本ファンドによる気候テック関連企業への成長投資を通じて、これら企業が有する先端技術の商業化・スケール化及び技術導入の促進を図り、投資先企業の企業価値を高めると同時に、カーボンニュートラル社会実現に向けた脱炭素化を後押しすることを目指す」とコメントしている。