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SBIホールディングス、環境スタートアップ企業と連携し、今秋に国内で「カーボンクレジット・排出権取引所」開設へ。東証が進める取引所と「競争」へ(各紙)

2023-06-08 01:48:53

asueneキャプチャ

 

  各紙の報道によると、SBIホールディングスは環境スタートアップ企業のアスエネ(東京)と連携し、今秋にも国内でカーボンクレジット・排出権取引を開設するという。すでに両社で「Carbon EX(カーボンイーエックス)」と命名した新会社を設立した。クレジットの取引市場としては、東京証券取引所が2023年度中の開設を目指して試行取引を進めており、日本でも「カーボン市場競争」が生まれそうだ。

 

 (写真は、アスエネの企業サイトから)

 

 SBIとアスエネの取り組みについては、Bloombergや日本経済新聞等が報じた。新会社の「Carbon EX」は2日付で設立したとしている。資本金1億円で、SBIとアスエネが折半出資。カーボン取引市場は、インターネット上に専用サイトを設け、同社が売り手と買い手の取引の間に入り、資金決済を担当する仕組みとする。新会社は、取引所開設から5年後に年間1000億円の取扱高を目指すとしている。

 

 アスエネは、2019年の設立で、現在は、CO2排出量の見える化・削減・報告のクラウドサービス「アスゼロ」を展開するほか、持続的なサプライチェーン調達のためのESG評価クラウドサービス等を提供している。

 

 取引するクレジットは、東証の試行取引も対象とするJ-クレジットのほか、国際的に取引が増えている民間団体による認証付きの自主的カーボンクレジット(JCM)等や、太陽光や風力発電等の再エネ発電の環境価値を示す非化石証書も取り扱うとしている。

 

 経済産業省が推進する「GX(グリーントランスフォーメーション)リーグ」では、2026年度に排出量取引市場を本格始動させる青写真を描いている。だが、市場の動きのほうが先行する形になりそうだ。ただ、J-クレジットや非化石証書等は、国際的な評価の対象になっていないほか、発行量が限られることから、「Carbon EX」と東証市場の2社が競争・競合するほどのクレジット量を確保できるかという課題もある。

 

 世界全体のクレジット市場の現在の規模は約20億㌦(約2800億円)とまだまだ小さい。今後の拡大が見込まれているものの、クレジットで排出削減を補完する前に、企業本体での排出削減実績を高めるべきとの指摘も強い。さらに多様なクレジットの価格付けでは共通性があまりない等の技術的な課題もある。

 

 今回、取引対象とする「国内版クレジット」のJ-クレジット等は、海外のクレジット等に比べると、国際的な信頼性という面でまだ確立されていない面もある。法的規制に基づくEUの排出権取引制度(EU-ETS)でのクレジット(EUA)の場合でも、取引量によって市場価格が乱高下する等の状況が続いている。ほぼ同時に立ち上がる2つのカーボン取引市場の需給を満たすクレジットを供給できるかが課題になりそうだ。

https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUC0189W0R00C23A6000000/?type=my#AAAUAgAAMA

https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2023-06-07/RVUTNADWRGG001

https://earthene.com/corporate/about#company