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伊藤忠商事。EUが2026年から導入する炭素国境調整メカニズム(CBAM)に対応する日本企業向けに、EUの排出権(EUA)を仲介販売ビジネスへ。英企業と連携(RIEF)

2023-06-09 08:45:35

CFPartersキャプチャ

 

  伊藤忠商事は9日、英企業と提携し、EUが2026年から導入を決めている炭素国境調整メカニズム(CBAM)の適用を受ける日本企業向けに、EUのCO2排出権(EUA)を仲介売買する業務を始めると発表した。CBAMに対応した日本企業向け排出権取引事業を展開するのは初めて。

 

 EUは2030年の気候目標(90年比55%削減)を達成するためCBAMの導入を決めている。同制度は、EU排出権取引制度(EU-ETS)を改革して、鉄鋼、セメント等の6業種等への排出枠の無料配分を止め、規制を強化する代わりに、同業種について、EUよりも気候対策の低い国からの輸入品に、EU企業と同等の負担となるカーボン税を課す仕組みだ。https://rief-jp.org/ct5/134941?ctid=

 

 日本はCO2削減の30年度目標として、46%削減(2013年度比)としている。削減目標がEUより低いうえ、現状の実績は政府発表でも、2021年度の排出量は基準年の2013年度比で16・9%減。EUと同じ90年比では8.2%減にとどまる。これまでの国全体での削減ペースは年平均338万㌧減で、30年度目標の達成は不可能な状態にある。https://rief-jp.org/ct8/134796?ctid=

 

 こうしたことから、EUが2026年に導入するCBAMの対象業種について、日本からの輸入製品にカーボン税が課せられるのは濃厚になっている。このため、伊藤忠はEUのほか欧州の排出権取引事業に強い英CF Partner(CFP)と連携し、EUのEUAを、CBAM規制の対象業種に属する日本企業向けに、販売を仲介する。

 

CBAM0022キャプチャ

 

 CFPは2006年の設立で、EUや英国の排出権取引関連事業のほか、気候関連するビジネスを展開している。これまでに累計で25億㌧超のEUAを欧州市場で取引してきた実績を持つ。2022年の取引高はEUA価格が高い水準で推移した結果、単年だけで約30億㌦に達したとしている。

 

 EUはEU-ETSの改革で、新たな対象セクターに、2024年からEU域内を発着する総㌧数5000㌧以上の船舶も対象とする。さらに2026年には排出量の100%分の排出枠購入義務を課す。このため、日本からの船舶も規制の対象になるとみられることから、同船舶・海運事業者向けのEUAの仲介販売も目指すとしている。

 


 日本企業は、CBAMの規制に対応するには、EU企業と同様にEUAを購入してコスト負担をするか、EU当局にCBAMに伴うカーボン税を支払うかの選択が必要になる。カーボン税はカーボン取引市場でのEUA価格に準拠して定められる見通しだが、市場価格の変動を想定すると、事前に自らEUAを調達する需要が高まるとみられている。そこで伊藤忠は、CFPが市場から調達するEUAを、CBAMの対象となる日本企業向けに仲介し、自社は販売クレジットに対応する手数料収入を得ることを目指す。

https://www.cf-partners.com/carbon-compliance-markets

https://www.itochu.co.jp/ja/news/press/2023/230609.html