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トヨタの「気候ロビー活動の年次開示」を求める欧州資産運用機関の株主提案。欧米勢の賛成表明増える。反対はノルウェーのNBIM等。14日に株主総会開催(RIEF)

2023-06-13 07:16:52

toyotageneralmキャプチャ

 

 トヨタ自動車は14日に定時株主総会を開催するが、欧州のAPGアセットマネジメント等の大手資産運用機関3社が、同社の気候変動関連の政府等へのロビー活動情報の開示を求める提案に対して、欧米の主要な機関投資家が追随する模様だ。海外での報道によると、米最大の公的年金のCalPERS(カリフォルニア州職員退職年金基金)等がすでに株主提案への賛成票を投じたことを明らかにしている。ただ、世界最大ソブリンファンドのノルウェー「政府年金基金(GPFG)」の運用を担当するNorges Bank Investment Management(NBIM)は反対表明が伝えられている。

 

 株主提案を出しているのは、オランダのAPG Asset Managementのほか、ノルウェーのStorebrand Asset Manegement、デンマークのAkademikerPensionの3機関。いずれもESG等を重視する欧州の大手資産運用機関だ。3機関は、「トヨタおよび日本の経団連の気候関連ロビー活動は、パリ協定の目標達成への適合と大きくかけ離れている」と指摘、トヨタに定款を変更して、ロビー活動の影響とパリ協定への適合を年次開示するよう求めている。

 

 この株主提案に対して、これまでのところ、日本の機関投資家、資産運用機関の対応は公表されていない。欧米機関では、CalPERSをはじめ、CalSTRS(カリフォルニア州教職員退職年金基金)、ニューヨーク市の5つの年金を統括するCity Comptroller(同市会計検査院)、英Church of England Pension Board(CEPB)、スウェーデンの政府年金のAP7等の主要プレイヤーが名を連ねる。議決権行使助言会社のISSも賛成を推奨している。

 

 

 またトヨタは、CA100+のエンゲージメント対象企業となっている。このため、同活動に参加する資産運用規模68兆㌦に及ぶ700以上のグローバルな機関投資家や運用機関の中からも、株主提案に賛同する動きが出る可能性がある。

 

 これに対して、同提案に反対の立場を示しているのはNBIMのほか、ISSとは別の議決権行使会社のグラスルイスで、同社は株主に提案への反対を推奨している。欧米勢の賛否表明の動きを見る限り、現状では賛成派が多いようだ。一方、保有株式の主要な割合を占める日本勢は反対票を投じるところが多いとみられるが、過去の気候関連の環境NGOの提案では、金融グループの資産運用会社が自社グループへの株主提案に賛成した事例もあり、ESG、サステナビリティ関連提案の場合は、運用機関の方針との整合性も求められる。

 

 今回のトヨタの株主総会では、同気候ロビー活動情報開示の提案とは別に、豊田章男会長の取締役の選任に、グラスルイスが「反対」を推奨している点も注目されている。

 

 グラスルイスは5月下旬、トヨタは「独立取締役の人数が不十分で、取締役会の客観性・独立性・適切な監督を行う能力には重大な懸念がある」とし、取締役選任議案に反対するよう株主に推奨した。

 

 グラスルイスは、トヨタが独立社外取締役として選任を提案した4人のうち、三井住友銀行の大島真彦副会長はトヨタと取引関係にあるので「独立性」に疑義があるとし、同氏を除くと、独立性があるのは3人だけで、東京証券取引所(東証)の上場基準の「取締役の少なくとも3分の1が独立している」との条件を満たしていないと指摘。その責任を負う取締役会議長としての豊田氏選任に反対を推奨した。

 

 トヨタ側は、グラスルイスの見解に対して「東証からも、新任取締役の独立性について届け出をし、承認をもらっている」と説明。「客観性、独立性、適切な監督を行う能力」についての懸念はないなどと反論している。

 ただ、グラスルイスの推奨を受けて、CalPERSは豊田氏再任に反対票を投じたと公表している。昨年の総会では、内山田竹志会長(当時)が同様の理由で助言会社から「反対」を推奨された経緯がある。内山田氏の場合、最終的に9割超の賛成率で選任されている。ISSはここでは、グラスルイスと対照的に、トヨタの会社提案の取締役選任案に「賛成」推奨の立場だ。