HOME4.市場・運用 |経産省の「GXリーグ」の参加企業、1月末比で約17%の110社強が「離脱」。日本航空、NTTドコモ等。自主的参加で削減効果に疑問な点や、GXへの国際的評価が低いこと等が影響か(RIEF) |

経産省の「GXリーグ」の参加企業、1月末比で約17%の110社強が「離脱」。日本航空、NTTドコモ等。自主的参加で削減効果に疑問な点や、GXへの国際的評価が低いこと等が影響か(RIEF)

2023-07-28 07:40:37

GX003キャプチャ

 

 経済産業省は「グリーントランスフォーメーション(GX)」政策の軸と位置付ける自主的な排出量削減取り組みの「GXリーグ」の参加企業数を公表した。それによると、1月末時点で公表していた企業数から17%近くに相当する110社強が参加を見送り、566社(6月末時点)に減った。主な「離脱企業」は日本航空(JAL)、ヤマダホールディングス、ニデックス(旧日本電産)、ローム、NTTドコモ等。同リーグへの参加自体が企業の自主判断によることと、GX自体の国際的評価が揺れていることなどから、見合わせた企業がかなり出た形だ。

 

 同省が今年1月末時点で公表していたGXリーグ賛同企業数は679社だった。今回(6月末時点)も参加を表明している企業は、CO2の高排出産業に属する鉄鋼、電力、化学等の場合は主要企業が参加しており、製造業の参加企業数は200社を超えた。これに対してサービス産業は54社、卸・小売業43社等と、産業によるCO2排出量の多寡で参加企業数に差が出た。

 

 GXへの資金供給を政府から期待されている金融機関は、銀行の3メガバンクをはじめ、大手地銀グループ、大手証券、大手生損保等が名を連ね、51機関が参加表明した。目に付いたのが、気候対策等に関連する企業を中心とする「学術研究、専門・技術サービス業」の分類企業の47社。18に分けた産業分類の中で5番目の多さだった。GXをビジネスチャンスとみなす企業群といえる。

 

 1月末に参加表明していたが、今回はリストを外れた110社強の「離脱組」の主な企業は、日本航空、ヤマダホールディングス、ローソン、ファミリーマート、大和ハウス工業、ニデックス(旧日本電産)、ローム、NTTドコモ、NTTコミュニケーションズ等。当初の参加見込みから今回離脱に切り替えた理由は、各社さまざまなようだ。

 

 JALは、ライバルの全日空(ANA)が最初から参加の意思を示していないことから、足並みを合わせたとみられるほか、国際航空便は国際民間航空機関(ICAO)のCORSIA(国際民間航空のためのカーボン・オフセット及び削減スキーム)規制への適合がグローバルに求められており、国内事情優先で「自主的」なGXリーグは参加の意義が薄い、と判断したようだ。

 

 また開示が求められる温室効果ガス排出量が直接排出量のスコープ1としていることから、グローバルな気候関連開示基準となる国際サステナビリティ基準審議会(ISSB)がサプライチェーンを含むスコープ3の開示を基本としていることに比べて「国際性を欠く」との見方も出ているようだ。

 

 業界によってリーグへの参加企業と不参加企業の差が目に付く業界もある。たとえば、運輸業ではJR東日本とJR西日本の2社は参加するが、それ以外のJR東海やJR九州等の名はない。私鉄は小田急と東急だけ。新聞社では、朝日新聞、読売新聞、日本経済新聞の3社が参加組だが、毎日新聞、サンケイ新聞、東京新聞の名はない。テレビ各社はゼロ。ソフトバンクは参加するが、楽天の名はない。

 

 GXリーグでは23年度から自主的な排出量取引制度を予定している。同制度では、当初3年を第1フェーズとし、参加企業は自社のScope1排出量(直接排出量)が年間10万㌧以上の場合と、それ以下の場合に分け、それぞれ自社の削減目標を申告する。10万㌧以上の企業の場合、目標を超過削減すると、超過分の売買が可能になる。未達の場合は他社の超過削減枠あるいはクレジットを調達するか、あるいは未達理由の説明だけでもいい。EU等のように未達の場合の罰則はない。

 

 26年4月以降の第2フェーズからは、段階的に目標未達の場合の規制色を強める方針としているが、企業の自主的な目標設定を続ける場合は、企業は達成可能な目標を選定するとみられるため、削減効果は引き続き限られるとみられる。経産省が削減目標を設定するとEU並みの規制となるが、現時点では定かではない。

https://gx-league.go.jp/member/