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東京証券取引所のカーボン・クレジット市場。初日の取引は3689㌧。約定総額1178万円。再エネ電力由来クレジットに集中。平均価格はEUのクレジット価格の約4分の1(RIEF)

2023-10-12 13:10:57

NHK002キャプチャ

写真は、クレジット取引開始を伝える東証のディスプレイ=NHKのニュースから)

 

 東京証券取引所が11日に開設した「カーボン・クレジット市場」の初日の取引高は、合計3689㌧(CO2換算)だった。売買されたクレジットは国が認定する5種類の「J-クレジット」で、もっとも多く取引されたのは、「再生可能エネルギー(電力)」。全体に占める割合は大半(96%)の3562㌧、約定総額約1178万円だった。もっとも約定金額が高かったのは、「森林クレジット」で㌧当たり9900円で、最も安かった「再エネ(熱)」の約4倍だった。クレジット創出源によって価格差が明確に表れた。

 

 東証のクレジット取引は、午前と午後の2回の取引で、初日の取引では午前中の取引額は17.8%、午後の取引で5倍以上に取引が増えた。午前中の取引では初日ということで「ご祝儀的」な取引が軸となり、その午前中の取引状況を踏まえて、午後に「実需的」な取引で取引額が増えたとみられる。https://rief-jp.org/ct4/139672

 

 取引対象となったクレジットは、すべて「J-クレジット」だが、クレジットの創出を認める温室効果ガス(GHG)排出量削減の事業によって、「省エネ」「再エネ(電力)」「再エネ(熱)」「森林」「地域版J-クレジット、およびJ-VER(未移行)分等」の5種類。

 

 初日の取引の大半が、「再エネ(電力)」クレジットに集中したのは、太陽光、風力等の再エネ発電による削減効果が明瞭なクレジットである点が評価されたとみられる。「省エネ」は午前中の1件だけ。「森林」は、価格は高かったが、午前と午後で価格が約3割下がり、価格差2900円になった。森林による削減効果評価の妥当性については、グローバル市場でも課題となっており、買い手側の価格判断の難しさが表れた形でもある。

 

 もっとも高い価格で取引されたのは午前中の森林クレジットで9900円。それでもEUのクレジット(EUA)価格は直近のICE先物市場で84.48ユーロ(約1万3390円)に比べると、3割近く低い。取引種類全体平均では、㌧当たり3195円で、EUA価格の4分の1程度。これは、日本では排出削減規制がないことから、企業側のクレジット需要がまだ限られていることを映している。

 

 クレジット価格が国際水準に比べて低い点だけでなく、取引されるクレジット量の確保も課題だ。わが国でのJ-クレジットの発行額は年間100万㌧とされる。東証では今回のクレジット市場での年間取扱高を50万~60万㌧と見込んでいる。今月末にはSBIホールディングス等によるクレジット取引市場の「カーボンEX」も立ち上がる予定で、早くもJ-クレジットの品不足を懸念する声もある。

 

 このため、東証等では、国が途上国への温暖化対策支援で獲得する二国間クレジット(JCM)等も将来、取引対象に加えることを検討しているようだが、JCM自体もクレジット量は限られている。「カーボンX」はクレジット確保のため、海外のクレジット取引を柱にする方向で、両市場の今後の市場戦略が注目される。

https://www.jpx.co.jp/corporate/news/news-releases/0060/20231011-02.html