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トヨタと出光興産。電気自動車(EV)向けの全固体電池量産化で提携。2027~28年に販売するEVへの搭載目指す(RIEF)

2023-10-13 15:15:19

toyotaキャプチャ

 

  トヨタ自動車と出光興産は12日、電気自動車(EV)向けの次世代電池「全固体電池」の量産化に向け、提携すると発表した。提携の主な分野は、固体電解質の量産技術開発や生産性向上、サプライチェーン構築等と幅広く設定している。2027年度に国内で同電池の生産ラインを稼働させ、27~28年にトヨタが発売するEV車に搭載する予定。両社が開発する全固体電池は、10分以下の充電時間で、現在のEVの走行距離の2.4倍の約1200kmを走行できる。

 

 全固体電池は電流を発生させるために必要な電解質を、通常使われる液体から固体に置き換えたもの。既存のリチウムイオン電池に比べるとエネルギー密度が高い。したがって、同じ電池サイズであればEVの走行距離を現状より2倍程度伸ばせるという。充電時間も短縮できることから、実用化・量産化できると、EV市場での競争上、優位に立てる。

 

 同電池開発には、出光が2001年から、トヨタは2006年から取り組んできた。両社の提携では、EV向けに高容量・高出力を発揮しやすいとされる硫化物系の固体電解質の開発を中心に進める。同固体電解質は、柔らかく他の材料と密着しやすいため、電池の量産がしやすい特徴がある。

 

全固体電池の仕組みと
全固体電池の仕組み㊧と、固体電解質の成分㊨

 

 出光はこれまで、石油精製の過程で得られる副産物を活用して、固体電解質の中間材料である硫化リチウムの製造技術を深め、量産技術の開発に取り組んできた。両社の提携は、タスクフォースを設立し、3段階で進める。まず、第1フェーズは、開発の軸になる硫化物固体電解質の量産化のための実証(パイロット)装置を、出光が開発する。

 

 第2フェーズは、その実証装置を使って、硫化物固体電解質の製造と量産化を進めるとともに、トヨタは同固体電解質を用いた全固体電池と、同電池を搭載したEV車の開発を推進する。第3フェーズは第2フェーズの実績をもとに、将来の本格量産と事業化に向けた検討を両社で進める。こうしたステップを経て、全固体電池搭載EVの2027~2028年での市場導入を、より確実なものにする、としている。

 

 3段階での推進のため、出光は27年度に、千葉県に小型のパイロット量産設備を立ち上げる。同設備で、年間数万台分のEV生産が可能な規模の固体電解質の出荷に備えた体制を整備する。一方のトヨタは、27~28年の同電池搭載EVの市場投入に向け、本社(愛知県豊田市)地区に全固体電池の生産ラインを建設する方針としている。

 

 トヨタはEVの世界販売台数を2026年に150万台、30年に350万台まで伸ばす計画を掲げる。EV車の製造に際しては、電池部分が車全体のコストの3〜4割を占めるとされる。搭載する電池の性能が、車両価格や走行距離を左右することから、消費者にとってはEV購入に際して、電池の性能の良し悪しが判断ポイントになる。現在の世界のEV市場では、米国のテスラ、中国のBYDが先行しているが、トヨタは全固体電池搭載車をグローバル市場で戦略的に展開していくことになるとみられる。

 

 トヨタの佐藤恒治社長は「両社の材料開発技術と、出光の材料製造技術、トヨタの電池量産技術をひとつにして、全固体電池の量産に本格的に取り組んでいく。大切なことは『実現力』。『変革をカタチに』のビジョンを掲げる出光と、モビリティカンパニーへの変革に向けて、ビジョンをクルマで具現化していくことを大切にしているトヨタ。そんな両社が一緒にやるからこそ、その『実現力』は何倍にもなると思っている」と強調した。

 

 出光の木藤俊一社長は「トヨタと出光が技術を持ち寄り、全固体電池の実用化を実現する。さらには、この協業で得られた技術を、世界の標準として展開していく。それは、日本の技術力の高さを世界に示すことにもつながる」と述べた。

https://global.toyota/jp/newsroom/corporate/39898897.html

https://www.idemitsu.com/jp/content/100043690.pdf