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テスラ。第3四半期の営業利益等大幅減少するも、カリフォルニア州規制に伴う他の自動車メーカーへのカーボンクレジットの売却益は大幅増加。収益のほぼ3分の1を占める(RIEF)

2023-10-22 21:10:17

Tesla002キャプチャ

写真は、EVの新車を搬送するテスラのトラック=テスラのサイトから)

 

 電気自動車(EV)最大手の米テスラ(Tesla)が発表した今年の第3四半期の決算では、自動車の生産台数、納車台数ともに減少したことから、営業利益、純利益とも前期比で大幅減少となった。ただ、米カリフォルニア州のCO2排出規制に伴うカーボンクレジットの販売からの収益は5億5400万㌦で、純利益の29%を占めた。クレジット収入は前年同期比では94%増、前期比でも96%増と急増、四半期ベースの収益として過去2番目の多さだった。

 

 営業利益等の減少は、これまで独占状態だったEV市場への他の自動車メーカーの進出増で、競争が激化していることを反映する。しかし、他の自動車メーカーは引き続きガソリン車等の販売も併用していることから、カリフォルニア州の規制に適合するため、テスラのクレジット(Regulatory credits)に対する購入需要が増大している形だ。テスラは同州の規制の恩恵を受け、独占的なクレジット売り手として、収益を稼いでいる。

 

 全米最大の自動車販売市場であるカリフォルニア州では、カリフォルニア州大気資源局(California Air Resources Board : CARB)による規制で、各自動車メーカーは、州内の販売台数の一定割合をEV、燃料電池車(FCV)、プラグインハイブリッド車(PHEV)等の「ゼロエミッション車(ZEV)」とすることが義務付けられている。このZEV目標は、各メーカーの販売に占めるZEVの販売比率を26年までに35%、30年に68%、35年に100%へと段階的に引き上げることを求めるものだ。

 

 各自動車メーカーは、目標を達成するためには、同州内での新車販売に際して、自らEV化を早めるか、テスラからクレジットを買うかの選択を迫られる状況が続いている。テスラ自体は、すべての販売台数がEVなのですでに100%化を達成した形で、未達の他のメーカーにクレジットを販売できる立場にある。EVを専攻開発してきたテスラの「先行利得」の形だ。

 

 EVと同時に、従来からのガソリン車やディーゼル車の内燃機関(ICE)エンジン車を販売する他の自動車メーカーは、EVの新車販売数がガソリン車等の非EVの販売数を上回るだけでなく、CARBが設定する段階的な目標値を満たさない限り、クレジットを購入し続けなければならない。https://rief-jp.org/ct8/124566?ctid=

 

 テスラの場合、EVしか生産・販売していないため、EVの販売量に応じてクレジット売却量が増大する仕組みだ。今年第3四半期のクレジット販売額は、同期の販売高としては過去最大、前期(2億8200万㌦)比で96%増、前年同期比で94%増だった。四半期ベース全体では、2022年第一四半期の6億7900万㌦に次ぐ、過去2番目の売却高を記録した。テスラは2022年の年間を通して、総額17億8000万㌦のクレジット売却益を計上している。

 

 一方で、テスラ全体の総売上高は、前期の249億2700万㌦から233億5000万㌦に約6.6%減少した。営業利益も17億6400万㌦で前期比73%、純利益は18億5300万㌦で前期比68.5%にそれぞれ減少した。前年同期比でも営業利益、純利益は大きく下回ったが、総売上高はわずかに上回った。テスラの売上、利益率が低下しているのは、EV市場での競争激化の影響で販売価格が低下したことが大きい。

 

 テスラからカーボンクレジットを購入した他の自動車メーカーの名前については公表されていない。過去に公表されたメーカーとしては、米ビッグスリーのGMやクライスラー等が含まれており、トヨタも購入している。

https://ir.tesla.com/press-release/tesla-releases-third-quarter-2023-financial-results

https://digitalassets.tesla.com/tesla-contents/image/upload/IR/TSLA-Q3-2023-Update-3.pdf