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日立製作所。ブロックチェーン技術を活用して、J-クレジットのデジタル化で11月から実証事業。CO2排出量の計測・算定・検証等を迅速化。クレジット創出事業の拡大に貢献(RIEF)

2023-10-31 22:22:04

Mac001キャプチャ

 

 日立製作所は30日、国が認定するカーボンクレジットの「J-クレジット」の認証・発行プロセスをブロックチェーン技術等を活用してデジタル化する実証事業に、11月から取り組む。J-クレジットは東京証券取引所で始まったカーボンクレジット市場での取引対象だが、クレジットの認証や削減される温室効果ガス(GHG)の計測や算定、検証等の作業は人手によっており、膨大な時間と手間がかかっている。デジタル化することで、クレジット創出事業の普及と取引の活性化につなげる期待がある。

 

 日立は、2022年4月に日本取引所グループのJPX総研、野村證券、BOOSTRYとともに、ブロックチェーン技術を活用したホールセール向けセキュリティ・トークン債(デジタル債)の発行時のシステムの一部の開発を担った。今回は、同システムで開発したサステナブルファイナンスプラットフォームのグリーン・トラッキング・ハブをカーボンクレジットの認証等に適用する。https://rief-jp.org/ct12/132622

 

 実証実験では、同トラッキング・ハブを使い、投資家のグリーン投資で建設した太陽光発電設備が生み出すCO2削減に関するデータを、ブロックチェーン技術によって自動的に記録・管理する。CO2削減量等のデータ収集はIoTセンサーを使い、データの検証、報告等のプロセスを簡易化する独自の基盤(簡易創出基盤)を構築した。これにより、J-クレジットの認証・発行にかかる手間を削減し、クレジットの供給量拡大につなげることができるとしている。

 

 日立はすでに6月に同事業の実証計画を策定している。11月からは実機システムを使って本格的な実証実験を行い、2024年3月までに実証効果の整理と実際の運用に向けた計画の検討を行う予定だ。同取り組みは、環境省の「 J-クレジット制度に係るデジタル技術活用に向けた調査検討委託業務」の一環で、日立は同事業の委託事業者であるデロイトトーマツコンサルティング合同会社の協力事業者となる。

 

 脱炭素化が課題となる中で、企業のカーボンクレジット需要は年々高まっている。J-クレジットは、再エネや省エネ事業、森林保全事業等の、CO2削減・吸収量からのカーボン・クレジットを国が認証する制度。対象事業には、企業の設備だけでなく、自治体や一般家庭の再エネ、省エネ設備も含まれることから、クレジットの評価に必要なGHG排出削減・吸収量の計測や算定、検証にはかなり手間がかかる状況となっている。

 

 また国際的な自主的クレジット排出量(VCM)の創出・取引でも、クレジット評価のデジタル化が進んでいる。このため、企業が内外でクレジットを調達して管理する際、デジタル化されていないクレジットはマネジメントコストがかかるため、市場で敬遠される懸念もある。J-クレジットの場合も、現状の人手での対応方式では、膨大な時間と手間がかかるため、特に中小企業や一般家庭での活用が伸び悩んでいる課題がある。

 

 日立は、10月11日から取引を開始した東京証券取引所のカーボン・クレジット取引所の取引システムを、JPX総研とともに協働開発している。今回のクレジットの認証・発行事業でのデジタル化と、クレジット市場での取引を連動させ、わが国でのクレジットの発行、検証、取引の流れのデジタル化を促進し、脱炭素社会の実現を推進していきたいとしている。

https://www.hitachi.co.jp/New/cnews/month/2023/10/1030a.pdf