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日立製作所。ブロックチェーン技術採用の「グリーンデジタルボンド」12月中に発行へ。100億円分。昨年のJPX総研の発行に次ぐ。本格的な規模での発行は初めて。野村證券等と協働(RIEF)

2023-11-16 23:44:33

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 日立製作所は16日、ブロックチェーン(分散型台帳)を使った「グリーデジタルボンド」を12月中にも発行すると発表した。数年来、同技術開発を進めている日本取引所グループ(JPX)のJPX総研と野村證券等と連携し、本格的なホールセール向けセキュリティ・トークン債(デジタル債)を100億円規模で発行する。同ボンドはJPXが第一号を昨年中に発行しているが、本格的な規模で発行するのは日立が初めてになる。

 

 グリーンデジタルボンドは期間5年。12月上旬に発行条件が決まる見通し。資金使途は、2019年に建てた省エネルギー対応のビルの建設費用や改修費用の借り換えに充当する。

 

 同ボンドの発行は、日立製作所のほか、JPX総研、野村證券の4社が協働で推進する。同ボンドは、デジタル技術を活用して、グリーン投資に関連したデータの透明性の向上やデータ収集の効率化をめざす債券で、日立とJPX総研が開発したグリーン・トラッキング・ハブに加え、BOOSTRYが提供するブロックチェーン基盤を活用して社債型セキュリティ・トークン(デジタル債)スキームを活用する。

 

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 同ボンドは、野村証券と野村総合研究所(NRI)が2020年に試行的に、ブロックチェーン技術を活用した国内初の債券を合計3000万円分、発行している。これに加えてJPXも昨年中に、5億円分を発行している。しかし、100億円という市場ベースでの規模での発行は今回の日立の発行が初めてとなる。https://rief-jp.org/ct4/100843?ctid= https://rief-jp.org/ct12/132622?ctid=

 

 日立は、同ボンドで調達する資金使途について、2030年度までの事業所(ファクトリー・オフィス)のカーボンニュートラルの実現に向け、2019年3月に東京都国分寺市で竣工した中央研究所「協創棟」(省エネルギービル)の建設費用及び改修費用のリファイナンスに充当する予定としている。

 

 今回のデジタル債は、日立が発行会社となる公募STO(セキュリティ・トークン・オファリング)となる。STOは、発行会社が従来の株式や社債などに代わり、ブロックチェーンなどの電子的手段を用いて発行するトークンに株式や社債などを表示する「セキュリティ・トークン」により資金を調達するスキームを指す。今回のグリーンデジタルボンドにより、投資されるプロジェクトが生み出す環境・社会への効果を測定かつ比較可能な指標として示すことができることから、ESGを重視する投資家のニーズに対応できると考えられる。

 

 ボンドのESG債としての適格性については、格付投資情報センター(R&I)が国際資本市場協会(ICMA)のグリーンボンド原則(GBP)に適合しているとするセカンド・オピニオンを付与している。

 

 同デジタル債では、従来の証券保管振替機構による管理に代わり、BOOSTRYが主導するコンソーシアム型ブロックチェーンネットワーク「ibet for Fin」を用いて発行・管理を行い、発行から期中管理、償還までの業務プロセスを電子的方法によって完結させる。ibet for Finによるシステム上での社債原簿の管理を行うことで、従来型の社債では困難だった発行会社による社債権者の継続的な把握などが可能になるとしている。

 

 日立では、グリーデジタルボンドの発行に合わせて、期限7年と10年の普通社債も同時に発行する。調達額は合計で最大800億円となる。12月上旬に条件が決まる見通しで、調達資金は負債の借り換えなどに充てる。

 

 日立は、今回のグリーンデジタルボンドによる調達資金の透明性を高めるため、同社とJPX総研が開発したグリーン・トラッキング・ハブを活用し、資金充当した省エネルギー性能を有する建物のエネルギー消費量を自動的に計測し、ベンチマーク比でのCO2排出削減量、エネルギー削減量に換算、データ開示等を実践するとしている。これにより、投資家は常時、外部から同事業の進捗状況をモニタリングできる。

 

 このグリーン・トラッキング・ハブでは、すでに対応済みである再エネ施設からのデータ収集機能に加え、今回、建物からのデータ収集の対応も実践する。さらに、今後、対象となるグリーンアセットを順次拡大していくとしている。 グリーン・トラッキング・ハブは、カーボン・クレジットの発行・認証の自動化や、事業会社のカーボン・オフセット支援などにも活用できるとしている。

https://www.hitachi.co.jp/New/cnews/month/2023/11/1116.pdf