HOME4.市場・運用 |アラブ首長国連邦(UAE)も、脱石炭国際連盟(PPCA)に参加。化石燃料産出国の「カベ」を破り、「脱石炭」を宣言。国内の石炭火力発電所はすでに2022年に廃止(RIEF) |

アラブ首長国連邦(UAE)も、脱石炭国際連盟(PPCA)に参加。化石燃料産出国の「カベ」を破り、「脱石炭」を宣言。国内の石炭火力発電所はすでに2022年に廃止(RIEF)

2023-12-06 23:00:31

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写真は、石油・ガスの化石燃料依存から、再エネ開発にシフトするUAEの太陽光発電所)

 

  アラブ首長国連邦(UAE)のドバイで開催中の国連気候変動枠組み条約第28回締約国会議(COP28)で、議長国のUAEが、新規の石炭火力発電の建設中止と、既存の石炭火力発電を2030年までに段階的廃止を誓約する脱石炭国際連盟(The Powering Past Coal Alliance  : PPCA)に署名したと発表した。すでにCOP開催中に米国が他の6カ国と共に参加を表明しており、今回のUAEの表明で参加国は59カ国に達した。中東の化石燃料産出国としての署名はUAEが初めて。

 

 UAEとともに、欧州・地中海のマルタ共和国も署名した。PPCAは2017年に英国、カナダのリーダーシップで立ち上がった。PPCA宣言は、OECDやEUは遅くとも2030年までに石炭火力の段階的廃止が必要、それ以外の世界の国々も2040年までに段階的廃止が必要、としている。特に政府については、既存の排出削減対策を施していない石炭火力の段階的廃止と、CCS等の削減対策のない新規の石炭火力の停止の両方の誓約を求めている。

 

 今回のCOP開催直後の2日、米国が参加を表明したことで、主要7カ国(G7)諸国で未加盟は日本だけとなった。「グリーン・トランスフォーメーション(GX)」政策を掲げながら、「ブラウンな」石炭利用から脱しきれず、米国にも「置いてきぼり」にされた日本のGX政策の「ウォッシュぶり」を象徴する形となり、内外で話題を集めた。https://rief-jp.org/ct5/141046?ctid=71

 

PPCA参加を表明した議長のジャベール氏
PPCA参加を表明した議長のジャーベル氏

 

 今回のUAEの署名は、中東産油国として初めて。同国は他の中東諸国と同様、石油・ガスは生産するが、石炭は生産していない。しかし、石油・ガスも同じ化石燃料であり、温室効果ガス(GHG)の排出量削減のためには、石炭からの脱却に続いて、石油・ガスの利用の抑制も求められる。したがって、これまでのCOPでは、主要な産油国は、石炭抑制にも消極的なスタンスをとってきた。

 

 COP28の議長を務めるUAEのスルターン・アル・ジャーベル氏は「今日(5日)、UAEとしてPPCAへの参加を表明できて喜ばしい。COP23(2018年)以来、PPCAは、脱石炭に動き、クリーンな形のエネルギーに向かうグローバルなモメンタムを促進するリーダーの役割を担ってきた。脱炭素への道は、対策のない石炭エネルギーから、再生可能エネルギーへの移行を含まねばならない。われわれが、そうした必要な行動に沿っていくことは明らかであり、COP28は、そうした進展を可能にする行動的なソリューションを提供することを示す場だ」と述べた。

 

 UAEは石炭を生産しないが、これまで国内に石炭火力発電所を一カ所保有していた。しかし、同発電所は2022年に廃止されている。同国は政府収入の40%を国内で開発する石油・ガスからの収入で得ている。同時に、太陽光発電等の再生可能エネルギー分野への投資も進めている。

 

 UAEと同時にPPCA参加に署名したマルタは、すでに1996年に国内の石炭火力発電所からの脱却を完了している。両国の参加で、PPCAへの署名国数は59カ国となった。日本政府は署名していないが、日本からは京都市が唯一、自治体政府として署名している。

COP28 Presidency holder, United Arab Emirates joins a growing coalition of countries committed to coal phase-out – PPCA (poweringpastcoal.org)