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2023年の世界の平均気温。観測史上最高を更新。産業革命前からの気温上昇は、パリ協定の「1.5℃目標」に迫る「1.48℃」。気候変動とエルニーニョ現象等が複合影響の可能性(RIEF)

2024-01-11 02:27:55

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グラフは、1940年1月から2023年12月まで平均気温を1991~ 2020年比の平年差(℃)で各年を時系列で示したもの。2023年は赤の太線。それ以外の年は細い線で示し、青(1940年代)から赤レンガ色(2020年代)まで10年ごとに区分)

  2023年の世界の平均気温は、1850年の気象観測開始以来、もっとも暑い年だった。EUの気象情報機関「コペルニクス気候変動サービス(C3S)」が9日公表した。これまで最高気温を記録した2016年を0.17℃上回った。また、産業革命前の1850年~1900年平均に比べると、パリ協定の「1.5℃目標」に迫る1.48℃とギリギリの水準だった。年間のすべての日で初めて1℃を上回ったほか、年間のほぼ半分の日で1.5℃を上回り、11月には2度にわたって「2℃」を超えた。まさに、「地球沸騰の年」だったことを気温が動かぬデータとして示した形だ。

 世界全体での気温上昇の要因は、人類の経済活動による地球温暖化の加速に加え、太平洋の赤道東部地域で発生したエルニーニョ現象による海面温度上昇の影響等が、複合的に作用したとみられる。

 C3Sによると、2023年の平均気温は14.98℃。これまで年間最高気温だった2016年の平均気温を0.17℃上回った。直近の1991年~2020年平均よりも0.60℃高く、産業革命前の1850年~1900年平均に比べると、1.48℃高かった。昨年は6月以降の平均気温が12月まで7カ月連続で過去最高を記録するなど、年後半に異常な気温上昇が継続した。

陸上の気温上昇の推移。㊧は5年平均気温の産業革命前比での上昇度。㊨は1年ごとの気温の産業革命前比での上昇度
(注)陸上の気温上昇の推移。㊧は5年平均気温の産業革命前比での上昇度。㊨は1年ごとの気温の産業革命前比での上昇度

 こうした2023後半の高気温は、1991年から2020年の平均気温に対して記録的な高さだっただけでなく、気象学者たちが、推計してきた気候学的平均気温に比べても、これまでの推計を上回る記録的な水準だったという。2022年から2023年にかけての1年間の年平均気温の変化も、過去のどの年にもないほどの変化の大きさだった。エルニーニョの影響はあるが、2023年の同現象の場合、過去の1997/98年や2015/16年の現象に比べると弱いレベルだとしている。

 

 C3Sは、2023年の記録的な気温の要因として、エルニーニョや地球温暖化の進展の影響を指摘しながらも、「それだけによるものではない」との見方を示している。「23年全体の包括的な原因究明はまだできていないが、地球全体の海面水温の上昇、南極の海氷面積の記録的な低さ、陸地での異常気象等は、明らかな要因だ」と指摘。さらに2022年1月に起きた太平洋トンガでの海底火山の噴火による成層圏水蒸気の増加、船舶によるSO2排出量減少によるエアロゾルの減少、現在の太陽周期のピークへの接近などの影響の可能性にも言及している。

 

 では2024年はどうなるのか。C3Sでは、2023年よりもさらに気温が上昇する可能性があるとみている。複数の気候データセットによると、年間を通しても世界の平均気温は産業革命前のレベルを1.5℃上回る可能性があるとしている。月単位の平均気温がパリ協定の「1.5℃目標」を超える月は、今年の1月か2月も昨年並みのトレンドが続くと「1.5℃超え」となり、年間ペースの12カ月連続でのパリ協定目標超えが実現しそうだ。

 

 高気温の継続は年間を通じて、世界各地で、熱波、洪水、干ばつ、山火事など、多くの異常気象の発生を引き起こした。世界中で発生した山火事によるCO2排出量は、2022年比で30%増加したと推定される。カナダでは山火事が年間を通じて続いた。

 

一日の気温が産業革命前から1℃~1.5℃を超えた日の隔年ごとの推移のグラフ
(注)一日の気温が産業革命前から1℃~1.5℃を超えた日の隔年ごとの推移のグラフ

 

  激しい集中豪雨による鉄砲水による水災害や、大きな気圧の谷の通過による大規模洪水等が、1月と3月に米国カリフォルニア州を襲ったほか、7月にはチリでも発生。サイクロン「フレディ」は2~3月にかけて、アフリカ南東部を、サイクロン「モカ」は5月に南アジアと南東アジアを、ハリケーン「ヒラリー」は8月にメキシコと米西部を、10月のハリケーン「オーティス」はメキシコを、9月のストーム「ダニエル」は地中海沿岸を、後熱帯低気圧「ジャスパー」は12月にオーストラリア、をそれぞれ直撃した。

 

 これらの台風や、大規模な低気圧、熱帯低気圧等による豪雨は、海洋温度の上昇の影響を受けて、例年以上に強大化し、各地で洪水、土砂崩れ、氾濫等の被害を引き起こした。アフリカ東部の「アフリカの角」地域のように、長らく降水不足が続いていたところに、豪雨が降り注いだため、干からびていた土壌の大規模な流出が発生し、洪水被害が一段と悪化した事例もある。

 

 干害も、特に北米(メキシコ)や南米(アマゾン流域、パンタナール湿地帯、アルゼンチン、ウルグアイ)、アフリカ西部等で長期間の降水不足を引き起こした。熱波も世界各地で発生した。特に、南欧、北アフリカ、北米とアジアの一部で顕著な熱波が起き、その後、南米、アフリカ南部、オーストラリアの一部でも季節的に熱波が起きた。こうした高温と乾燥の長期化は大規模な山火事を引き起こす要因にもなった。南欧、カナダ、南米、オーストラリア、ハワイなどでも被害が広がった。

 

 南極の海氷面積は、8カ月連続で過去最小を記録した。特に、2月には、日平均、月平均ともに海氷面積は、過去最小となった。一方の北極海の海氷面積は、3月の海氷面積がもっとも大きかったが、その大きさは、衛星観測史上で過去4番目に小さい面積。海氷が縮小する夏場9月の面積は観測史上6番目の小ささだった。

 

 大気中のCO2とメタンの濃度は上昇を続けた。年間を通じて、それぞれ419ppmと1902ppbに達した。22年に比べると、CO2濃度は2.4ppm高く、メタン濃度は11ppb増加した。

https://climate.copernicus.eu/global-climate-highlights-2023