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住友商事。バイオマス由来のCO2回収・貯留の「BECCS」技術で、ノルウェーのスタートアップ企業と連携。少額出資し、カーボンクレジット創出事業ノウハウを吸収(RIEF)

2024-01-22 17:44:47

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写真は、バイオガスプラント=住友商事のプレスリリースから)

 

  住友商事は22日、バイオマス由来のCO2を回収・貯留するCO2除去事業(CDR : Carbon Dioxide Removal)を展開するノルウェーの「Inherit Carbon Solutions AS」に少額出資したと発表した。出資額は公表していない。Inheritは、北欧で普及しているバイオメタンガスの生産で発生するCO2排出量を、CCS技術で地中に貯留するCDR手法によりカーボンクレジットの創出を目指している。住友商事は、同社と連携することで、欧米やアジア地域で、カーボンの貯留権益を確保しながらCDRクレジットを創出し、クレジット需要の増大が予想される航空・船舶業界等を中心にグローバルに販売するほか、将来は日本企業向けへの販売も目指すとしている。

 

 Inheritは2021年設立の若いスタートアップ企業。北欧等で普及しているバイオガスの開発から発生するCO2を回収・貯留するアプローチ(BECCS)を使ってクレジットを創出するプロジェクトの開発・普及を展開している。北欧のエネルギー大手のエクィノール、デンマークのガス会社「Gas Storge Denmark」等がパートナーシップを結んでいる。

 

 BECCS技術は、CDRの手法の一つとして知られる。Inheritの場合、廃水や食品残渣等からバイオガスを生産する際に発生するCO2を回収・貯留することでカーボンクレジットを創出し、企業等へ販売することを目指している。同社ではBECCS由来クレジットの販売を2025年から手掛ける計画だ。昨年12月には、米マイクロソフトとの間で2028年をメドとしたクレジット供給の販売契約を結んでいる。

 

住友商事のプレスリリースから
住友商事のプレスリリースから

 

 CDRは「ネガティブエミッション技術(NETs)」とも呼ばれる。自然資源の植林や森林整備、バイオ炭等の活用により、大気中のCO2を吸収してクレジットを創出する手法と、BECCSのほか、大気中のCO2を直接機械的に吸収するDACCS等の工学的プロセスによる手法とに分類される。これらの手法によって発行されるカーボンクレジット市場は、現状は21億㌦規模だが、2030年には800億㌦台に成長すると予測されているという。

 

 住友商事は「当社が持つグローバルネットワーク・信用力と、InheritのCO2除去のノウハウを組み合わせることで、欧米やアジア地域において、今後、必要となる貯留権益を確保しながらCDRクレジットを創出し、クレジット需要拡大が期待される航空・船舶業界や、将来的には日本企業向けの販売にも取り組む」と事業戦略を展望している。

 

 CDRの最大の課題は、各事業やエネルギー等からのCO2を吸収するだけでなく、それらを安全かつ低コストで長期的に貯留する技術と、貯留サイトの確保にある。住友商事を含め、日本の商社等は、すでにCCUS技術・事業への取り組みをグローバルに進めており、住友商事のInheritとの提携も、同社の貯留技術・サイトの分野での事業ノウハウの蓄積を活用する点にあるとみられる。

https://www.sumitomocorp.com/ja/jp/news/topics/2024/group/20240122

https://www.inheritcarbonsolutions.com/about