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日本証券業協会。財務省が今月発行する「グリーン・トランスフォーメーション移行経済債(CTB)」への投資推奨のような「談話」公表。金融庁に背中を押された(?)(RIEF)

2024-02-01 18:53:41

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  日本証券業協会は1日、森田敏夫会長名で「クライメート・トランジション利付国債(CTB)発行によせて」と題した「談話」を発表した。それによると、財務省が今月発行する予定の「グリーン・トランスフォーメーション(GX)移行債=CTB」の意義を強調し、「ソブリンのトランジション・ボンドをわが国が発行することは、民間事業者の予見可能性を高め、官民協調でGXを実現していく姿勢を国内外に示し、今後の民間からの更なる資金供給の呼び水となることが期待される」と呼び掛けている。CTBを投資家に対して「買い推奨」するかのようだ。発行体と投資家の仲介役である証券会社の業界団体が、国債とはいえ、特定の金融商品への投資を呼びかけるのは珍しい。

 

 「談話」は、日本政府が推進するGX政策を高く評価している。「わが国だけでなく、アジアをはじめ、世界全 体のGXを加速させる一つの契機ともなりうると考えている」「GX経済移行債は、GX実現に向けた投資や脱炭素技術の社会実装を推進する投資促進策へつながるものと理解しており、高い予見性の下、官民GX投資の実行フェーズに向けて、オールジャパンとして着実に歩みを進めることが肝要」等としている。

 

 脱炭素への移行については、金融安定理事会(FSB)が2017年に公表したTCFD勧告では、気候変動に伴う移行リスクと物理的リスクへの対応が重要と指摘し、これらのリスクと対処方法を投資家に示す情報開示の必要性を強調した。現在はそうしたリスク対応のインフラ整備が進行中だが、まだ市場では「実装」されていない。しかし、「談話」ではGX移行債(CTB)はすでに『高い予見性』に基づいて発行される、かのように読める。

 

 TCFDが指摘したリスクのうち、移行リスクは、脱炭素技術を開発する技術リスクのほか、気候政策に伴う政府の政策が突然変更されるような政策リスクも含んでいる。CTBはそうした将来の政策変更リスクへの対応も「高い予見性」で織り込み済みであるかのように読めるが、どうか。

 

 ただ、「談話」は、だれに向けて発言しているのかは、明記していない。後半のほうでは「われわれ証券業界も、国による取組みの意義を認識し、証券市場が有する資金調達・供給機能を通じ、市場仲介者として資金調達者・投資者とのエンゲー ジメントを継続しながら、GXの着実な推進に資するべく尽力する所存である」と述べており、「決意表明」のようでもある。

 

 誰に対しての「決意表明」だろうか。月内に1兆6000億円分が発行されるCTBを、投資家に完売するぞ、という業界ぐるみでの決意の披瀝のように読める。各証券会社の監督機関である金融庁に背中を押されたのかもしれない。

https://www.jsda.or.jp/sdgs/20240201_Statement_JapanClimateTransitionBonds.html

https://www.jsda.or.jp/sdgs/20240201_Statement_JapanClimateTransitionBonds_JP.pdf

https://www.jsda.or.jp/sdgs/20240201_JSDA_SustainableFinance_Summary.pdf