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石川県、能登半島地震にも「負けず」、初のグリーンボンド発行。県内外投資家の支援で、国の移行国債(CTB)を大きく上回る「グレニアム(グリーン性のプレミアム)」で即日完売(RIEF)

2024-02-21 22:32:17

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  石川県は21日、同県として初となるグリーンボンド50億円分を発行した。今年正月の能登半島地震の発生で、起債の実施も一時危ぶまれたが、地震からの復興対策による財政負担増大の中でも気候・環境分野の資金を確保し、カーボンニュートラルや、能登でのトキの放鳥候補地の環境整備・生物多様性保全等の政策推進のために発行した。地震からの復旧・復興を急ぐ同県を財政的に支援しようという県内外の投資家や企業等の投資が集り、地方債のグリーンボンドでは異例の「グレニアム(グリーン性のプレミアム)」が生じ、ボンドは即日完売となった。

 

 同県初のグリーンボンドは、発行額50億円、期間5年、利率は年0.378%。主幹事は、みずほ証券、野村證券、三菱UFJモルガン・スタンレー証券の3金融機関。セカンドオピニオンは日本格付け研究所(JCR)。https://rief-jp.org/ct12/139952?ctid=

 

 同県の公募債としては今年度は、昨年10月の同じ5年債発行(100億円)に次ぐ2度目。昨年10月の発行は利率0.443%だった。発行時期は異なるが、同じ発行体の同じ償還期間の公募債なので、今回のグリーンボンドには0.065%のグレニアムが生じたとみることもできる。

 

 今月、財務省がグリーン・トランスフォーメーション(GX)政策の資金源となる初の移行経済国債(クライメートトランジション国債=CTB)」を発行したが、同国債のグレニアムは0.01%とわずかにとどまった。単純に比較すると、石川県のグリーンボンドはCTBのグレニアムより6.5倍も高く評価されたわけだ。その分、石川県は低コストで資金調達できたことになる。https://rief-jp.org/ct4/142731?ctid=69

 

 財務省はCTB発行に先駆けて、欧米にもロードショーに出かけるなどの追加コストをかけてアピールした。これに対して、石川県は能登半島地震の影響で、1月中旬に予定していた投資家向けWebセミナーを取りやめざるを得なかった。投資家は初の移行国債に対しては、本当に移行につながるのかという疑問を隠し切れず、慎重な投資姿勢をとった一方で、石川県のグリーンボンドに対しては、明瞭なグリーン事業であることと、地震復興が急務の同県の財政状況を意識して投資で支援したと読める。日本の投資家も結構、冷静でかつ明確な投資判断をとっているともいえる。

 

 資金使途先は、グリーンボンドなので、地震対策への直接的な資金は盛り込んでいない。資金使途先の気候、環境対策としては、エネルギー効率化、再生可能エネルギー等の6分野を設定。このうち「環境維持型管理」の分野では、能登地域でのトキの放鳥の実現に向けた生物多様性、里山・里海の保全、カーボンニュートラルの実現等をあげている。

 

 トキは江戸初期には全国的に生息していたが、明治に入って乱獲や生息環境の悪化で急速に減少。能登半島は佐渡島と並んで最後までトキの生息地だったが、1970年に能登のトキは全滅(佐渡のトキも2003年に全滅)した。その後、中国から贈られたトキの人口繁殖で増え、環境省は、能登半島と島根県出雲市を放鳥候補地としている。

 

 このほか、グリーンボンドの資金使途には、気候変動の適応事業として、▼水害対策 河川整備、ため池整備、農業用施設の防災対策▼高波・高潮対策  海岸保全のための護岸・堤防等の整備▼土砂災害対策 砂防、治山、地すべり、急傾斜地崩壊対策、道路法面工事 ▼災害時のネットワーク形成に向けた緊急輸送道路の整備ーー等が盛り込まれている。

https://www.pref.ishikawa.lg.jp/zaisei/data/koubosai/greenbondhakkou.html

https://www.pref.ishikawa.lg.jp/zaisei/data/koubosai/documents/greenbondframework.pdf