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GPIF運用委員長の米澤康博早稲田大教授 環境・社会配慮の資産運用に慎重姿勢を表明(FGW)

2015-04-23 22:22:11

米澤康博GPIF運用委員長
米澤康博GPIF運用委員長
米澤康博GPIF運用委員長


公的年金の年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)の運用委員長を務める米澤康博早稲田大学教授は、都内で開いた会議に出席、GPIFの資産運用において、環境・社会面にも配慮した投資判断を行うかどうかについて「収益を犠牲にすることになるので、年金加入者の理解を得られるかという問題がある」と慎重な姿勢を示した。

 

金融庁が年金基金等に示したスチュワードシップコードでは、投資家として投資先企業の状況を把握する項目の一つに、社会・環境問題に関するリスク配慮を挙げている。また地球温暖化対策を推進するために、グリーンボンドなど環境対策への資金供給を意識した金融商品や市場作りも進んでいる。

 

こうした状況の中で、運用資産130兆円を擁するGPIFが環境・社会面も評価に加えた多様な資産運用が期待されているが、米澤委員長は環境・社会面のコストを強調し、「受益者責任との関係もある」と、距離を置く姿勢を明らかにした。同委員長はその理由として、過去に環境面を重視した運用が企業収益をあげるかどうかという研究調査を実施したものの、明確な結論が得られなかったとしている。

 

カルパースなどの欧米の主要な年金基金は、国連の責任投資原則(PRI)に署名し、環境・社会面への配慮も投資判断にくわえる姿勢を明確にしている。これに対して、GPIF米澤委員中の「(環境・社会のためには)動かない宣言」は、極めて異例に映る。

 

日本の投資家からも、「長期的にみれば環境・社会面を評価することで仮にコストアップになったとしても長期投資の観点に立てば、収益は確保できる」との指摘もある。米澤委員長の発言を逆に考えると、あくまでも収益至上で運用するということで、運用姿勢が短期的にシフトする可能性もある。そうなると、長期運用が基本の年金運用の原則から逸脱するリスクもほの見える。

 

現実の市場での運用経験がなく、GPIFの公的役割の意味を十分に認識していない学者を運用委員長に据えていることの危うさが、顕在化しないことを期待したいが。