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環境。経済産業両省、石炭火力容認で”手打ち”。 CO2削減へ電力業界が監視団体結成。新電力を含め、自主的に排出量を抑制へ。抑制義務はなし(各紙)

2016-02-09 15:49:18

Coalキャプチャ

各紙の報道によると、丸川珠代環境相は8日、林幹雄経済産業相と会談し、二酸化炭素(CO2)排出量が多い石炭火力発電所の新設計画について、両省が協力して電力業界の管理を強化するのを条件に容認することで合意した。

 

 これを受けて東京電力などの大手電力と新電力各社は同日、CO2排出削減を監視する「電気事業低炭素社会協議会」の設立を発表した。同協議会には東電、関西電力、Jパワー、日本原子力発電など既存電力のほか、東京ガス、大阪ガス、JXエネルギーなど新電力各社が参加する。参加企業の販売電力シェアは国内の99%以上となる。

 

  石炭火力の新設計画は、東京電力福島第一原発事故後に増加。環境省は、日本が国際公約とした2030年の温室効果ガス排出量を13年比で26%削減する目標を達成できなくなる恐れがあるとして昨年来、環境影響評価法に基づき、秋田や愛知など5件の計画に対し「是認できない」との姿勢をとってきた。これに対し、電力会社等の意向を受けた経済産業省との調整が図られていた。

 

 両省の合意では、経産省が省エネ法とエネルギー供給構造高度化法に基づき、業界の取り組みを監視するルールを整備し、石炭を含む火力発電の効率に数値目標を定めて、効率の悪い設備の廃炉を促す。また、再生可能エネルギーと原発を合わせた非化石電源の利用割合を合計で原則として44%以上にするよう電力会社に要請する。

 

 こうした両省の合意を受けて設立される電力業界の自主監視組織は、各社に対して毎年度、削減計画と実績の報告を求め、努力が不十分な場合は除名も含む罰則を科すという。電気事業連合会などの電力業界は、2030年度の電力販売量1kW時当たりの温室効果ガスの排出量を、13年度比で約35%削減する自主目標を打ち出しており、監視組織はこの目標の達成を目指す。

 

 電気事業連合会の八木誠会長(関電社長)は、この仕組みによって「(30年度に13年度比35%減という)目標の達成を確実なものにしていきたい」と話している。

 

 電力業界の自主監視体制を踏まえた形の政府内での合意だが、法的義務ではないので、今後、監視組織に参加しない企業が増えてきた場合や、自主規制を守らず組織から除名された企業が、追加的な排出をした場合は罰することはできない。

 

 環境省は、経産省から毎年、電力会社の取り組み状況について資料を受け取り、排出削減が守られているかどうかを点検したうえで、万一、電力業界の目標の達成が危ぶまれる場合は、対策の見直しを検討すると説明している。発電所の建設を認めた後で、具体的にどのような対策がとれるかは定かではない。

 

 国際的には米国がオバマ政権によって、石炭火力発電所からのCO2排出量を約30%削減することを州法で規制するクリーン・パワー・プラン(CPP)を打ち出しているほか、米欧の年金基金等では石炭火力事業への投資資金を引き揚げるDivestmentの動きを強めている。また中国でも旧式の石炭火力を停止して、再生可能エネルギー発電に切り替える動きが推進されている。

 

 そうした国際的な潮流に比べて、今回の環境・経産両省の合意は、電力業界の自主規制に乗っかった形の”手打ち”で、実質的な効果が得られかは、「結果次第」という極めてあいまいな展望といわざるを得ない。

http://www.env.go.jp/index.html