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ブラジル マイナス成長でエネルギー産業からのCO2減少にもかかわらず、2015年全体の排出量は3.5%増。アマゾン等の森林伐採でCO2吸収源が急減少。周辺地域の気候激変要因にも(RIEF)

2016-10-28 15:51:52

Brazilキャプチャ

 

  パリ協定発効確定で、各国での温室効果ガス削減対策の実施が待ったなしになってきたが、排出規制だけでなく、吸収源対策の重要性が浮上してきた。2015年にマイナス成長に転落したブラジルだが、同年の温室効果ガス排出量は3.5%増。その理由はアマゾン地域等の森林伐採でCO2吸収源が縮小した影響だという。

 

 民間の市民団体等で組織するClimate Observatoryによると、同国のエネルギーセクターからのCO2排出量は前年比5.2%減となり、自動車などの燃料使用も低下している。2015年のブラジル経済は3.8%のマイナス成長となった。前年もわずかに0.4%成長で、南米で過去最悪の経済危機が続いている。

 

 一方で再生可能エネルギー発電は増加している。にもかかわらず、温室効果ガス排出量が3.5%増加したのは、森林伐採が記録的な勢いで進行しているためという。特に熱帯雨林が広がるアマゾン一帯では、過去4年の間に、伐採された森林は全体の4分の1に相当するという。

 

 ブラジルは2005年から10年にかけては、排出量削減に力を入れてきた。しかし、経済不況の深刻化で、森林の乱獲に拍車がかかっている形だ。Climate Observatoryの代表、Carlos Rittl氏は、「2015年に急増した森林伐採は、今年も引き続いて広がっている。違法伐採が多く、彼らの不法な利益稼ぎの一方で、社会や気候がそのコストを払わされている」と批判している。

 

 ブラジルはパリ協定で、2025年までに2005年を基準として温室効果ガスの排出量を37%削減し、違法森林伐採を2030年までになくすと約束している。協定に参加したすべての国は、目標を達成するために、定期的に成果を確認する必要がある。Rittl氏は「協定の目標は紙の上での宣言ではなく、実現に向けたドラスチックな変化を目指さねばならない。しかし、ブラジルでは全くそうなっていない」と指摘している。

 

 ブラジル経済は不況下にあり、産業部門からのCO2排出量は減少しているが、景気が回復したら、再び増加する懸念は高い。また上院は景気刺激のため、石炭火力に対して補助金を供与して支援する動きをみせている。市民団体などからも「パリ協定の発効が確実となったのに、ブラジルの動きは、そうした世界の流れに反している」との声があがっている。

 

 アマゾンなどの急速な森林伐採はCO2吸収力を低下させているだけではない。アマゾンの熱帯雨林は一日200億㌧の水蒸気を樹葉の蒸発を通して空中に放出している。その水蒸気放出力の低下によって、アマゾン南部への水分の流れが減少、サンパウロなどでの干ばつにつながっているという。さらには、北米や大西洋を越えたアフリカなどの気象変化にも影響が及んでいるという。

 

http://www.climatechangenews.com/2016/10/27/brazils-greenhouse-gas-emissions-rise-on-deforestation-spike/