企業などが責任あるリーダーシップを発揮して持続可能な成長を目指すことを推進する国連グローバル・コンパクト(UNGC)が、たばこ産業や核兵器製造企業などをメンバーから締め出す案を検討していることがわかった。国連のブランド、政策と整合性がとれない業種ということだ。アントニオ・グテーレス国連事務総長の決断次第で正否が決まる情勢という。
グローバル・コンパクトは1999年に当時の国連事務総長のコフィー・アナン氏が提唱、企業が自らの責任で企業社会の改善のリーダーシップを発揮することを提案したイニシアティブだ。2000年7月にスタートしている。
活動イニシアティブとして、4分野(人権、労働、環境、腐敗防止)において行動指針となる10原則を定め、これらの原則に賛同する企業が署名メンバーとして参加している。現在、世界166カ国の約9000社の企業と約4000の非営利団体等が参加。日本も252企業・機関(8月26日時点)を数える。
署名企業の業種を除外規定の対象にする案は、7月にNYで開いた理事会に、UNGCの「 Integrity Measures Review」に関する8つの勧告として盛り込まれた。勧告はUNGCへの「新規参加者の加盟条件」「現行の参加者の活動」「参加者の退出・再加盟」の3つの分野について、UNGCのブランドと評判を維持するための対応策として示された。
このうちの「新規参加者の加盟条件」の勧告の一つに、国連制度の趣旨に沿った除外規定の設定、として「たばこ、『議論を呼ぶ』兵器」が記載されている。たばこについては、国連の世界保健機構(WHO)が、たばこ規制枠組条約(WHO-FCTC)を設けて、グローバルなたばこ規制を推進している。一方の「議論を呼ぶ兵器」は7月に成立した国連核兵器禁止条約の対象となる核兵器や、生物兵器禁止条約の対象兵器の製造企業などが対象になる。
国連として条約や勧告などで国際的な政策活動を推進しているのに、その政策に反する事業の関連企業を「責任ある企業」として位置付けるわけにはいかない、というわけだ。仮にこの勧告が受け入れられると、世界最大のたばこメーカーで2015年にUNGCに署名したフィリップモリスなど、現在メンバーのたばこメーカー8社は「退出」を迫られる。日本の日本たばこ産業(JT)は最初からメンバーになっていない。
また「兵器」産業でも3社が退出候補になるという。現在、兵器産業の分野では、地雷製造業とクラスター爆弾関連企業の2分野の企業が、除外リストの対象になっており、これに核兵器と生物化学兵器製造業者が追加されるかどうかだ。
グローバルコンパクトの副代表の Gavin Power氏は「たばこに関する勧告が国連総長によって承認される可能性はあり得る」と述べている。理事会では同勧告を含めて8つの勧告をすべて採択する強い支持があるともされる。早ければ今月末から来月中にグテーレス事務総長の決断が示される可能性があるという。