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日本の格付2社が、PRIの「格付声明」に署名。信用評価にESG要素をどう取り込むか等、統合化作業を宣言(RIEF)

2017-12-05 22:17:50

PRI3キャプチャ

 

 日本の格付機関である格付投資情報センター(R&I)と日本格付研究所(JCR)の2社は、企業の信用力評価に際して、ESG要素を考慮することを宣言する「PRI格付声明(Statement on ESG in Credit Ratings)」に署名した。同声明は、PRI原則への署名とは別に、信用格付にESG要素をどう評価する作業を、産業界、投資家等と共同で取り組むことをうたっている。

 

 国連支援の責任投資原則(PRI)は投資判断に際してESGを考慮することを公約するPRI原則を推進している。今回の「声明」はそれとは別で、信用評価とESG要素評価をどう統合できるかという視点で、専門の格付機関等の取り組みを支援するための署名だ。署名機関は、日本の2社を加えて、格付会社14社、機関投資家約130機関(日本勢は日興アセットマネジメントとT&Dアセットマネジメントの2社)となった。

 

 「格付声明」は、格付会社が伝統的に担当している信用評価において、ESG要素を「システマティックかつ透明性をもって考慮することを促すこと」を目的とするもの。

 

PRIキャプチャ

 

 署名した格付機関が取り組むべき事項として、①異なる発行体について、それぞれのESG要素がどの程度、信用力に関係しているかを評価する②信用格付にESG要素がどのように考慮されるのかを、透明性をもって見解を公表する③ESG要素が信用分析にどのように統合されるかをレビューする――など、6項目を明記している。

 

 同声明は、信用格付にESG要素を直ちに反映させることを目指すわけではない。どのようにESG要素が信用力に影響を与えるのか、ESGを考慮する場合にどのような方法論が可能か、さらには、債券市場の発行体にESG情報を一貫性をもって公表する取り組みを促し、投資家とも対話を進めるなど、環境の整備を重視する形をとっている。

 

 PRIの調査では、PRIに署名した機関投資家はESG投資を重視しており、すでに債券投資においても、署名機関の約8割がESGを投資判断に織り込んでいるという。特に、気候変動関連で、エネルギー産業等においては、E(環境)要素の評価が大きくなっている。

 

  米格付機関のS&Pは、2017年8月までの約2年間の同社の信用格付で、E(気候変動含む)要素が格付に相応の評価対象となった事例を調べたところ、717件に上り、そのうち実際の格付や見通し等の変更につながった事例が106件あった、とのレポートを公表している。http://rief-jp.org/ct4/74848

 

 日本の格付2会社も、これまでもESG要素をそれぞれ扱っている。R&IはESGを格付評価の背景としてすでに認識している、としており、JCRも、ESG 要素のうち、3 年程度の範囲内で顕在化する可能性が高いものを信用格付に織り込んでいる、と説明している。

 

 ただ、投資と格付のESG視点は微妙に異なる。一般的に格付分析の期間は、通常、3~5年の期間を見据えて評価する。これに対して、機関投資家等は10年単位の長期投資の中でESGを位置づけている。また、格付機関はデフォルトリスクへのESGの影響をみようとするが、投資家は投資パフォーマンスにESGがどう影響するかをみようとする。

 

 また、格付機関は信用評価の中にESG要素を組み込んだ形で評価し、特別にESG項目をリスク項目として列挙する形はとらない。しかし、投資家はESG項目を財務評価とは別建てで評価項目とすることを好むなどの違いもある。これらの差異を同調整するかも、声明署名の各社の取り組み事例となる。

 

https://www.r-i.co.jp/index.html

https://www.jcr.co.jp/

https://www.unpri.org/page/esg-in-credit-ratings-initiative