海洋廃プラスチック、太陽光、水による劣化で温室効果ガス放出量増大。 これまでの温暖化効果に反映せず。米ハワイ大研究チームが突き止める。温暖化対策と廃プラ対策の連動不可欠に(RIEF)
2018-08-06 00:26:11
海洋等に大量に廃棄される廃プラスチックが日射の影響や水中での劣化が進むと、メタンやエチレンという2種類の強力な温室効果ガスが放出されるとの研究成果が公表された。米ハワイ大学の研究チームによるもので、これらの物質を最も多く放出するプラスチックはポリエチレン。レジ袋に使われているポリエチレンは、生産量と廃棄量が世界で最も多い合成高分子化合物で、温暖化対策と廃プラスチック対策の連動が課題となりそうだ。
研究チームは、米ハワイ大学マノア校海洋地球科学技術学部のデービッド・カール(David Karl)教授を中心とする。米科学誌「プロスワン(PLOS ONE)」に掲載された論文によると、プラスチック製の飲料水ボトルや買い物袋、食品容器や工業用プラスチックなどのあらゆるプラスチック製品を対象とする実験を実施した。
その結果、ポリエチレンからのメタン等の温室効果ガス排出量が最も多いことが分かった。国際エネルギー機関(IEA)のこれまでの分析では、エチレンなどの主要なプラスチックの前駆物質の生産からの温暖化効果は、世界のCO2排出量の1.4%分に相当すると推計している。しかしこの推計では、日射や水中での劣化による影響は加味されていない。
今回の研究はこうしたプラスチック関連物質が太陽光や水中で劣化することで、CO2排出量が増大することを実証的に解明した。研究チームは低密度のポリエチレンを212日培養することで、メタン、エチレン、プロピレンが増えることがわかったとしている。
さらに環境中に最短で152日間置いた場合、大気中ではメタン、エチレンの排出量が通常よりも2倍まで増え、水中で培養した場合はそれぞれ76倍まで増大したという。これ等の反応の違いは、温度の変化と熱反応の違いとみられる。先のIEAのプラスチックの前駆物質による温暖化効果の推計値は、環境中での変化を考慮に入れていないことから、仮に、海洋投棄分の温暖化効果が最大で顕在化すると、有力な温暖化加速要因になる可能性が高い。
ただ、今回の実験では、プラスチックによって環境中に放出される有害な温室効果ガスの濃度に関しての推計結果を示していない。この点について、論文の主執筆者のカール教授は、「プラスチックは気候に関連する微量ガスの発生源となる。プラスチックの生産量および環境中の蓄積量の増加に伴い、このガスが増えることが予想される」と指摘、温室効果ガス濃度への影響を推計することが不可欠だと主張している。
教授らは、2010年時点で世界192カ国で生み出される年間のプラスチック生産物は2億7500万㌧と推計され、このうち480万㌧~1270万㌧が毎年、海洋に流れ込んでいると見込まれる。プラスチックの大量生産はほぼ70年前から始まっており、さらに2025年までにプラスチックの生産量は倍増するとみられえる。したがって、海洋廃棄プラスチック量もさらに増えるとみられる。
http://journals.plos.org/plosone/article?id=10.1371/journal.pone.0200574