HOME11.CSR |東レ、100%植物由来のポリエステル繊維の試作に成功。消費生活の「脱炭素化」を後押し。「エシカル消費」の高まりで商機到来(各紙) |

東レ、100%植物由来のポリエステル繊維の試作に成功。消費生活の「脱炭素化」を後押し。「エシカル消費」の高まりで商機到来(各紙)

2020-02-22 07:15:30

toure3キャプチャ

 

 各紙の報道によると、東レは、衣料などに広く使われるポリエステル繊維について、100%植物由来の製品の試作に世界で初めて成功した。2020年代前半には量産化に移る予定で、現行の石油原料からの製品を切り替える。ポリエステル繊維は、世界の化学繊維生産量の8割を占め、植物由来への切り替えが進むと、脱炭素の進展に大きく貢献するとみられる。

 

 日本経済新聞が伝えた。東レでは、環境に配慮した商品やサービスを求める「エシカル消費」需要の広がりに合わせて、アパレルメーカー向けに新素材として提供する方針という。

 

 ポリエステルは、エチレングリコールとテレフタル酸を混合して作られる合成の人工ポリマー。主に石油を原料とする化学物質を人工的に結合させて「合成繊維」としている。プラスチックの一種。衣料品に多く使われ、世界の化学繊維生産量の8割を占めるという。このため、植物由来に切り替われば、脱炭素に資する。

 

日本経済新聞より
日本経済新聞より

 

 東レは、バイオ燃料の米スタートアップ企業、バイレント(ウィスコンシン州)との共同開発によって試作に成功したという。ポリエステル合成原料の一つ、エチレングリコールについては、すでにサトウキビを原料とした繊維が開発されている。インドのインディアグリコールズなどが供給し、東レをはじめ、台湾の遠東新世紀など複数の繊維大手が一部を繊維に利用している。

 

 ただ、もう一方のテレフタル酸の植物利用は進んでいなかった。そこで今回、植物の応用ノウハウを持つバイレント社の技術を活用し、サトウキビやトウモロコシのうち、食用に回らない部分を使うことで、ポリエステルの特徴である耐久性や加工のしやすさを確保した製品に仕上げることができたという。

 

 現在の見通しでは、発売当初の価格は石油のみを使った繊維よりも割高になりそうだが、量産技術を開発することで次第にコストを下げられると判断しているようだ。用途としては、スポーツウエアや婦人服、自動車の内装材などでの利用を見込んでいる。

 

東レのショールーム
東レのショールーム

 

 製品や素材に環境に優しいものや自然素材等を活用する「エシカル消費」はグローバルに進行している。欧米の若者を中心にしたこの消費志向は、世界中に広がっており、たとえば英国での「エシカル衣料」の2018年の消費市場は前年比16%増の5000万ポンド(約71億円)。この10年で12.5倍の成長となっている。

 

 アパレルメーカーの取り組みも積極的だ。スウェーデンのH&Mは、2030年までに、すべての衣料品素材をリサイクル品か、環境や社会に配慮した持続可能な調達に切り替える方針を打ち出している。ユニクロのファーストリテイリングはすでに一部植物由来の繊維を採用しているほか、今年入って、国連推進の「ファッション業界気候行動憲章」に署名している。

 

 同憲章は30年までにサプライチェーンも含めた温暖化ガス排出量の合計3割を削減することなどを目指している。ファーストリテイリングのほか、英バーバリーなど、世界的ブランド企業90社以上が署名している。

 

 東レはこうした消費市場の変化をとらえ、今回開発した100%植物由来のポリエステル繊維等の環境配慮型製品の供給量を2030年度には、13年度の4倍に拡大する計画を立てている。

https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20200222&ng=DGKKZO55934740R20C20A2TJC000

https://www.toray.co.jp/