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豪、炭素・資源2税を1日導入 投資への影響懸念(各紙)

2012-07-01 10:13:22

各紙の報道によると、オーストラリアは7月1日、炭素価格制度(炭素税)と鉱物資源利用税(資源税)の2つの大型新税を導入する。欧州債務危機などで企業が環境対策を進める余裕がなくなっている中で、炭素税は二酸化炭素(CO2)など温暖化ガスの排出量の国際価格より高い水準の負担を設定した。産業界は経済競争力を弱め雇用や輸出、投資環境に悪影響をもたらすと反発している。


 排出量取引は欧州や日本などで開始済み。欧州で取引される排出量の先物価格は1トンあたり8ユーロ(約800円)前後。欧州債務危機の影響で過去1年間に約6割下がったこともあるが、同23豪ドル(約1840円)の負担を義務付ける豪州の炭素税は2倍以上の負担となる計算だ。




 炭素税導入は直接納税する企業以外にも、電気やガス料金上昇を通じて他の企業や消費者まで波及する。財務省の試算では、炭素税導入により消費者物価指数が0.7%上昇する見通しだ。豪企業の75%が事業コストへの悪影響を懸念している。




 豪紙によれば米シェブロン系石油精製大手カルテックス・オーストラリアは「豪州と競合する国が同様の制度を導入するまで無償で企業に排出枠を提供すべきだ」と主張。豪北東部で液化天然ガス(LNG)開発を手掛ける英BGグループは「LNGはクリーンエネルギーなのに影響を受ける」と批判する。




 航空部門では豪航空最大手カンタス航空と傘下の格安子会社ジェットスターが国内線で追加料金を徴収。豪小売業協会は、電力会社による価格転嫁が消費に悪影響を与えると警戒、小売店で雇用削減の動きが加速する可能性があると指摘する。




 豪北東部の炭鉱を保有する豪英資源大手BHPビリトンと三菱商事の折半出資会社「BHPビリトン三菱アライアンス(BMA)」など複数の日本企業も炭素税の対象となっている。南東部に工場を持つトヨタ自動車の現地法人トヨタ・モーター・コーポレーション・オーストラリアでは年1600万豪ドル弱の負担増となる見通し。豪ドル高で割安の輸入車との価格競争が厳しく「顧客には転嫁できない」という。




 一方、豪鉄鉱石3位のフォーテスキュー・メタルズ・グループ(FMG)は6月、連邦最高裁に資源税は「違憲だ」と提訴した。資源税が西オーストラリア州の鉱業促進策を制限するなどと主張。鉄鉱石やLNGが豊富な同州の自由党政権もFMGに同調する構えを示す。労働党率いる連邦政府は「鉱物資源は国民のもの」と真っ向から対立する。




 財務省は資源税導入により今後4年間の歳出が134億豪ドル増えると見込む。ただ、UBSアナリストのグリン・ローコック氏は予想の4割にとどまると分析する。石炭事業の利益率低下などが響くためだ。




 連邦政府は12年度(12年7月~13年6月)の財政収支を15億豪ドルの黒字に転換させると公約する。資源税収が思うように伸びなければ公約達成が危ぶまれ、来年の総選挙にも影響するとの見方が出ている。野党の保守連合(自由党と国民党)は政権交代する場合は廃止する方針を打ち出している。