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岸田首相、「グリーントランスフォーメーション(GX)」推進で、10年間で20兆円の「GX経済移行国債(仮称)」発行方針。炭素集約型企業(ブラウン企業)の転換等に充当(RIEF)

2022-05-20 22:11:21

kishida001キャプチャ

 

 岸田文雄首相は19日、政府が提唱しているグリーントランスフォーメーション(GX)を推進するため、今後10年間の官民協調の投資額150兆円のうち、政府として20兆円規模を「GX経済移行債(仮称)」で調達する方針を明らかにした。「従来の本予算、補正予算を毎年繰り返すのではなく、複数年度にわたり民間の巨額投資の呼び水とするため、政府が支援資金を先行調達し、コミットメントを示す」と位置付けた。英仏独等の欧州諸国はグリーン事業に国費を投じるグリーン国債を発行しているが、わが国では炭素集約型企業(ブラウン企業)の低炭素化を後押しする移行国債の発行を選択することになる。

 

 同日、官邸で開いた「クリーンエネルギー戦略」に関する有識者懇談会の席上、明らかにした。経済産業省がまとめた「クリーンエネルギー戦略中間整理」によると、2050年カーボンニュートラルに向けた必要な官民両方での投資額として、2030年単年で約17兆円、今後10年で約150兆円と推計している。

 

 17兆円の内訳は、電源脱炭素化・燃料転換に約5兆円、製造工程の脱炭素化等に約2兆円、エンドユース約4兆円、インフラ整備約4兆円、研究開発等約2兆円等。これらのうち、政府が対応する分として、首相は「前例のない規模・期間での支援措置を示し、民間部門が予見性を持って投資を判 断できる仕組みを構築する」とした。

 

 政府が「移行国債」で調達した資金を先行投資し、対象事業の収益性を高め、民間の投資資金を誘導することを目指す考えのようだ。民間企業による移行債券(トランジションボンド)は、昨年来、わが国でも一部の炭素集約型企業が発行に踏み切っている。ただ、移行の定義や、移行後のグリーン化のレベル、移行過程の担保等の概念が国際的にも定まっておらず、ESG債で先行する欧州市場でも普及が進んでいない。

 

 またEUでは政府が民間投資に先行する形で調達資金を、炭素集約型企業の低炭素化等に投じるのは、競争制限的な政府補助金とみなされる可能性があることから、移行国債に取り組む国は現在までのところ表れていない。英仏独等の各国が発行するグリーン国債は、国が主導する再エネ、省エネ等のグリーン事業のための資金調達に限定している。

 

 こうしたグリーン事業のための国債発行は、原則として社会全体の低炭素化に充当される。だが、移行債の場合は炭素集約度の高い特定の産業、企業の天炭素転換等のために使われることになり、企業支援策としての側面が強い。「GX国債」については、経団連が4月後半に公表した政策提言の中で、GX政策パッケージ推進のための政府負担分として年平均約2兆円のGXボンド(国債)の発行を求めた経緯もある。経団連提案でも2030年までだと20兆円となり、首相提案の「GX経済移行国債」の総額と合致する。https://rief-jp.org/ct8/124633?ctid=71

 

 首相は「『官も民も』の発想で、今後10年超を見通して、脱炭素に向けた野心的な投資を前倒しで大胆に行っていくため、政府は、まず、規制・市場設計・政府支援・金融枠組み・インフラ整備などを包括的に、GX投資のための10年ロードマップを示す」としている。

https://www.kantei.go.jp/jp/101_kishida/actions/202205/19energy.html

https://www.cas.go.jp/jp/seisaku/clean_energy_kondan/dai2/siryou2.pdf