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金融庁、「ESG評価・データ提供機関の行動規範」正式に公表。「品質の確保」「独立性の確保・利益相反の管理」等の6原則。「世界に先駆けて設定」とアピール(RIEF)

2022-12-17 00:01:42

FSAキャプチャ

 

 金融庁は15日、「ESG評価・データ提供機関の行動規範」を公表した。規範は「品質の確保」「独立性の確保・利益相反の管理」等の6つの原則を掲げる。法令に基づくものではなく、対象業界の企業による自主的な対応を求める。同事業者だけでなく、投資家と企業に対しても、ESG情報開示に関する提言を含めている。同庁は「世界に先駆けた行動規範」とアピールしている。ただ、ESG評価機関等が立脚するタクソノミーや共通の開示基準・指標等は開発・提供していない。

 

 昨年11月、世界の金融市場監督当局で構成する証券監督者国際機構(IOSCO)は、各国でのESG評価機関やデータ提供事業者が提供する情報の評価や透明性が十分ではなく、利益相反等の課題があるとして、各国当局と事業者に対応を求める報告を出した。

 

 これを受け、金融庁は今年2月に専門分科会を設置して対応を協議、その取りまとめ結果を6月に「サステナブルファイナンス有識者会議」が了承してお墨付きを与えた。パブリックコメントを経て、今回、10カ月で「仕上げた」ことになる。この「スピード感」を同庁は「世界に先駆けた」と強調しているわけだ。

 

 行動規範に盛り込んだ6つの原則のうち、「原則1」は品質の確保をあげている。「ESG評価・データ提供機関は、提供するESG評価・データの品質確保を図るべきであり、このために必要な基本的手続き等を定めるべきである」とした。現状の品質に課題ありとの認識でもある。しかし、そうした品質向上につながる共通の開示基準、評価尺度、準拠するタクソノミー、指標等については言及しておらず、金融庁が提供しているわけではない。

 

 「原則2」は人材の育成。「ESG評価・データ提供機関は、自らが提供する評価・データ提供サービスの品質を確保するために必要な専門人材等を確保し、また自社において、専門的能力の育成等を図るべきである」

 

 「原則3」は、独立性の確保・利益相反の管理。「ESG評価・データ提供機関は、独立して意思決定を行い、自らの組織・オーナーシップ、事業、投資や資金調達、その他役職員の報酬等から生じ得る利益相反に適切に対処できるよう、実効的な方針を定めるべき。 利益相反については、自ら、業務の独立性、客観性、中立性を損なう可能性のある業務・場面を特定し、潜在的な利益相反を回避、またはリスクを適切に管理・低減するべき」。行政からの独立性の維持も必要だ。

 

 「原則4」は透明性の確保。「ESG評価・データ提供機関は、透明性の確保を本質的かつ優先的な課題と認識して、評価等の目的・基本的方法論等、サービス提供に当たっての基本的考え方を一般に明らかにするべき。提供するサービスの策定方法・プロセス等について、十分な開示を行うべき」

 

 「原則5」は、透明性の確保と対立する概念でもある守秘義務。「ESG評価・データ提供機関は、業務に際して非公開情報を取得する場合には、これを適切に保護するための方針・手続きを定めるべき」とした。原則4と同5のバランスをどうとるかが課題の一つだ。

 

 「原則6」は企業とのコミュニケーション。「ESG評価・データ提供機関は、企業からの情報収集が評価機関・企業双方にとって効率的となり、必要な情報が十分に得られるよう、工夫・改善すべき。 評価等の対象企業から開示される評価等の情報源に重要または合理的な問題提起があった場合は、ESG評価・データ提供機関は、これに適切に対処すべき」とした。

 

 企業から「必要十分な情報」を収集するには、共通の情報開示基準の設定が基本だ。金融庁が市場とコミュニケーションをして、制定すべきだ。国際サステナビリティ基準審議会(ISSB)の基準を待つだけでは、政策官庁の意味はない。米欧はそれぞれ国別の基準を整備中だ。

 

 

 投資家向けの提言では、投資家自らが投資判断等に用いている ESG評価・データについて、評価の目的、手法、制約を精査・理解し、評価結果に課題があると考えられる場合等には、ESG評価・データ提供機関や企業と対話を行うべきとした。 投資家自身が投資判断においてどのように ESG評価・データを利用するかについての基本的考え方を、一般に明らかにすべき、とした。

 

企業向けの提言では、「企業においては、規制動向等も踏まえつつ、ESG関連の情報をわかり易く開示すべきである」とした。繰り返しだが、そのための共通開示基準を示すべきだ。

https://www.fsa.go.jp/news/r4/singi/20221215/01.pdf