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公正取引委員会、大手電力各社の独禁法違反(取引制限)で、中部、中国、九州の各電力に過去最高の総額約1010億円の課徴金納付命令。中国電はトップ辞任。中部電は取り消し訴訟に(RIEF)

2023-03-31 02:45:17

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 公正取引委員会は30日、中国電力、中部電力と販売子会社・中部電力ミライズ、九州電力、九電みらいエナジーの各社に対し、事業者向けの電力供給をめぐり、互いに顧客獲得を制限する独占禁止法違反のカルテル(不当な取引制限)を結んでいたとして、合計で総額約1010億円の課徴金納付命令を出した。課徴金額としては過去最高額。カルテルには関西電力も関与していたと認定されたが、調査開始前に自主申告したため、行政処分を免れた。処分を受け、中国電力は同日、滝本夏彦社長と清水希茂会長が責任をとって辞任すると発表した。中部電力は「見解の相違があり、取り消し訴訟を提起する」としているという。

 各社に命令された課徴金額は、中国電力707億1586万円、中部電力とミライズ合計275億5590万円、九州電力27億6223万円。ミライズと中国電、九電と販売子会社の九電みらいエナジーに対し、排除措置命令も出した。

 関西電力は、中部、中国、九州の各電力それぞれとカルテルを結ぶ「中心的役割」を果たしていたとみられるが、公取の調査前に違反を自主申告したことから、課徴金減免制度(リーニエンシー)に基づいて行政処分を免れた。九州電力は調査開始後に違反とされた内容を申告し、調査に協力したとして課徴金額を30%減額された。

 koutoriキャプチャ

 公取委によると、今回摘発された各社は、2018年10月~2020年10月にかけて、オフィスビル・大規模工場等の大口顧客向けの「特別高圧」と、中小ビル・工場向けの「高圧」の電力供給をめぐり、お互いに、従来供給してきたエリア以外で顧客を奪い合わないよう営業活動を制限することに合意していた。https://rief-jp.org/ct10/113124?ctid=

 このうち、関電と九州電力が18年10月12日までに、関電と中部電力が同年11月2日までに、関電と中国電力が同月8日までに、それぞれ二者間でお互いのエリアでの競争制限で合意していた。各社の当時の副社長や常務などが複数回、会合を開いて取り決めていたという。中部電力ミライズは、中部電力から電気の小売事業を承継し、中部電に代わって当該カルテルの対象になった。

 具体的な取引制限の手法としては、関電と中部電力の場合、関電が中部電力管内の大口顧客に対する見積り提示を、代理業者を通じて行うもの、紹介業者から大口顧客の紹介を受けて行うもの、大口顧客から見積り提示の依頼を受けるなどしたものに限定するとした。直接の営業をしないとしたわけだ。

 一方の中部電力も、関電管内の大口顧客の獲得に関わる目標を大幅に減少させた。両社とも、お互いの供給区域で、相手方の対象となる大口顧客に対しては、想定を上回る(獲得が見込まれない)見積り額を示したり、顧客から見積りの提示を求められても辞退したり、見積りを提示する場合でも、基準となる電気料金の下限値を引き上げるなどで、実質的な価格競争を避けるなどの対応を重ねていたという。

 関電と中国電力、関電と九州電力のそれぞれの間では、関電と中部電力の間のような大口顧客に対する制限的行動に加えて、中国電力、九州電力の各管内の官公庁入札で、関電による安値の電気料金の提示による競合を避ける談合も結んでいた。関電は1年間に供給する電力量が30万kwh未満の官公庁入札には参加しないほか、参加する場合でも提示する電気料金の基準となる下限値を引き上げ、中国電力や九州電力の下限値に抵触しないようにしていたという。

 これら電力各社とその販売会社は、定期的に会合を開き、営業活動に関する情報交換を行っていた。また、それぞれが自社の供給区域外の顧客に営業活動を行う際には、当該区域の電力会社(旧一般電気事業者)に対して、当該顧客に営業活動を行うことなどに関する情報交換を「仁義切り」と称して、慣習的に行っていたという。こうした情報交換は、電力各社の代表者、役員、担当者等の幅広い層で複数のパイプで行われていた。

 また各電力会社は、正当な競争によって電力会社間での顧客移動が生じている「状況」を作り出すために、価格競争によらず、相互に顧客を獲得することを企図していた者がいたという。偽装工作だ。また電力を販売子会社に卸す価格を、新電力会社に卸す価格よりも安く設定したり、卸市場への電気の供給量を絞り込んで市場価格を引き上げ、新電力の競争力を低下させる策略をしていたケースもあると指摘している。「やりたい放題」なのだ。

 結果的に民間の大口顧客に高い電気料金での契約を強いたほか、官公庁にも高い電気料金の契約を強いることで、消費者の負担を高めたことになる。

 公取委は各社側に対し、再発防止のほか、他社と電気料金に関する情報交換を行わないよう排除命令を出した。また、各社が電気事業連合会(電事連)の会合前後に情報交換していたなどとして、電事連会長に対し、審査局長が再発防止を会員に周知徹底するよう申し入れた。「業界ぐるみ」の懸念を指摘した形だ。

 独禁法では、競争関係にある事業者がお互いの販売地域を分割、限定して競争を制限する等のカルテル行為を「不当な取引制限」として禁じている。これまでカルテルの摘発で課された課徴金の最高額は、2019年に摘発された道路舗装のアスファルト合材の販売価格談合でのメーカー8社への計約398億円だった。一気に2.5倍増となった。

 https://www.jftc.go.jp/houdou/pressrelease/2023/mar/230330_daisan.html

https://www.jftc.go.jp/houdou/pressrelease/2023/mar/230330_01.pdf