HOME10.電力・エネルギー |宮城県議会。「再エネ新税」条例を全会一致で可決。税率は営業利益の約20%相当に。森林開発事業に課税でコストを高め、平地での開発に誘導目指す。総務省の同意がカギ(各紙) |

宮城県議会。「再エネ新税」条例を全会一致で可決。税率は営業利益の約20%相当に。森林開発事業に課税でコストを高め、平地での開発に誘導目指す。総務省の同意がカギ(各紙)

2023-07-05 14:18:10

miayagi002キャプチャ

 

 各紙の報道によると、宮城県県議会は4日、森林開発による再生可能エネルギー発電事業の設備所有者を対象とする課税条例を全会一致で可決した。対象となる再エネ事業は、太陽光、風力、バイオマスの3種類。事業者の営業利益の約20%に相当する税を課す。大規模な森林開発を抑制し、発電適地に事業を誘導するのが狙いとしている。法定外税なので総務相の同意が必要となるが、県は同省と調整後、来年4月までに施行を目指すとしているという。

 

 (写真は、再エネ新税条例案を可決した宮城県議会=4日。仙台放送NEWSから)

 

 河北新報等が報道した。可決された新税導入案によると、対象となる事業は面積が0.5ha超で、5年以内に着工された再エネ設備。施設所有者から営業利益の20%程度に相当する税を徴収するとしている。森林開発を伴う新設の再エネ発電設備を対象とし、条例の施行前に開発に着手していたり、すでに稼働している既存の設備は対象外。同県の調べでは4月時点で県内で検討中の36事業が課税対象になるとみている。

 

 議会での条例可決を受けて、宮城県知事の村井嘉浩氏は「全会一致で認めていただいたということで、大変喜んでいる。事業者にしっかりと説明して、(森林開発ではなく)促進区域に設置してもらえるようにしたい」とコメントした。県では議会での可決を受けて、今月7日に、専門家などでつくる審議会を開き、促進区域の設定に関する市町村向けのガイドラインの整備を進める方針としている。

 

 条例は、森林地域での再エネ事業建設を避けて、平地の遊休地等に事業を誘導することを目的としている。森林開発を伴う再エネ事業に課税して開発コストを引き上げ、事業者に他の地域への事業展開を選択させる狙いだ。このため税率が重要となる。2月に公表した県の骨子案では、営業利益の20~30%程度としていたが、条例最終案では20%程度とした。県によると「30%では事業実施が困難だとの意見があった。20%程度は事業に対してインパクトがありつつ、事業性は確保できる適正な水準に設定した」としている。

 

 国は改正地球温暖化対策推進法で、市町村に再エネ事業の「促進区域」を定めるよう求めており、同区域内に整備された再エネ施設は新税の対象外とする。さらに県は今後、市町村が促進区域を設定する時の指針をまとめるとしている。

 

 実際に条例通りの課税ができるかどうかは、新税は地方税法に定める法定税以外に条例で新設できる「法定外税」に相当するため、総務省の了解を得られるかどうかがカギとなる。これまで、岡山県美作市が21年12月に太陽光パネルに対する新税の条例を定めたが、対象が毀損の太陽光発電事業も含めたことから、事業者が反対し、総務省との調整も進まず、実現されていない。

 

 自治体では、気候変動対策として再エネ事業を促進し、地域での投資が進むことによる雇用の確保も重視したい一方で、太陽光や風力発電の設置に際して、地域の景観への影響、災害時の土砂崩れ等を引き起こすリスク等とのバランスをどうとるかが課題となっている。

 

 自治体による再エネ事業を対象とした規制条例の整備は広がっている。報道によると、自治研究機構の調査で、条例で太陽光発電所の設置を規制している自治体は4月1日時点で、245自治体(7県、238市町村)。2014年に大分県由布市と岩手県遠野市が制定したのを皮切りに全国に広がり、22年は過去最多の48件の条例が制定されている。一方で、電源に占める再エネ比率は、現状(2021年度)20.3%で、2030年の温室効果ガス(GHG)排出量46%削減を達成するには不十分な状態となっている。

https://kahoku.news/articles/20230704khn000068.html

https://www.nikkei.com/article/DGKKZO72489220U3A700C2EP0000/?type=my#AAAUgjIwMA