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インドで開いたG20エネルギー相会議。脱炭素へのエネルギートランジションで共同声明見送り。議長文書で「今世紀半ばでの移行完了」を目指し、低コストファイナンス確保を強調(RIEF)

2023-07-23 14:27:06

g2OeNERGYキャプチャ

写真は、インドで開いた20エネルギー相会議WGの模様)

 

  20カ国・地域(G20)エネルギー相会議は22日、インドのゴアで会合を開いた。脱炭素と経済成長の両立を目指し議論を進めたが、各国の共通合意に至らず、共同声明の採択は昨年に続いて見送った。代わりに、合意できた一部を議長国のインドが成果文書としてまとめ、公表した。同文書では、化石燃料から脱炭素へのエネルギー移行に際して、エネルギーの安全保障、アクセス、市場の安定、適正価格の維持を同時に進めることを強調。そのうえで、今世紀半ばまでにエネルギートランジション(移行)を進める緊急性の必要性を理解することで一致した、とした。

 インドでのG20エネルギー相会議に先立って、「エネルギー移行ワーキンググループ」が20、21日の2日間にわたって開催され、先進国・途上国共通の脱炭素化への道筋を議論した。同ワーキングには、G20諸国とそれ以外の9カ国の招待国から、119人の代表が参加。脱炭素化と経済成長の両立等を目指し、化石燃料の使用低減や、再エネ発電の普及、それらを進めるための低コストサステナブルファイナンスの供給等を巡って議論が展開された。
 議長国のインドは、新興国や途上国を総括する「グローバルサウス」の代表として、気候変動の影響ですでに洪水や干害等の激化等が顕在化している現状を踏まえ、先進国からの追加支援を前提として、途上国の実情に合わせた脱炭素化の道筋を描くことを目指した。
 ただ、ワーキングでは、ロシアのウクライナ侵攻でエネルギー供給に混乱を招いたロシアへの非難を巡って参加国間で意見が対立し、G20本会議での共同声明の採択は見送った。インドのモディ首相は会合にビデオメッセージを送り、「世界はG20が持続的かつ安価で包括的なクリーンエネルギーへの転換を進めることを期待している」と強調するとともに、「グローバルサウスの国々が置き去りにされないことが重要だ」と述べた。
 成果文書では、脱炭素のエネルギートラジションは経済の成長と繁栄の追求とともに進めることを明記、すべての国にとって「近代的なエネルギー」へのアクセスを確保するとした。そのうえで、エネルギートランジションについては各国の対応に応じた「多様なパスウェイ(道筋)」を通じて進める緊急の必要性があることを理解する、とした。同パスウェイについては、国連の持続可能な開発目標(SDGs)の達成への貢献、今世紀半ばまで(あるいはその辺り:by or around midcentury)にネットゼロ/カーボンニュートラルを達成する、とした。
 またエネルギートランジションでカギとなる希少重金属の公平な確保を保つため、付属文書A「Voluntary High-Level Principles for Collaboration on Critical Minerals for Energy Transitions」と「Addressing Vulnerabilities in the Supply Chain of Critical Minerals」の文書を議長文書として採択した。
 エネルギートランジションのカギとなる再エネ等への投資コストを確保するための「Access to Low-Cost Financing for Energy Transitions」の分野では、世界全体で、年間4兆㌦強の再エネ投資を軸とした一次エネルギーミックスへの投資が必要とし、特に途上国がトランジションのために低コストのファイナンスへアクセスできることが重要と強調した。
 低コストのトランジションファイナンスを確保するうえで、世界銀行等の国際公的金融機関や多国籍開発銀行が、低コストファイナンスを促進するための新たなメカニズムや金融製品を開発・展開すると同時に、民間金融市場の資金を進めるよう要請した。