HOME10.電力・エネルギー |内閣府「再エネ総点検タスクフォース」。「電気安全環境研究所(JET)」の独占認証体制が、蓄電池普及の障害と指摘。認証費用は諸外国の10倍~数十倍。JET理事長は経産省出身(RIEF) |

内閣府「再エネ総点検タスクフォース」。「電気安全環境研究所(JET)」の独占認証体制が、蓄電池普及の障害と指摘。認証費用は諸外国の10倍~数十倍。JET理事長は経産省出身(RIEF)

2023-11-14 17:14:03

JET001キャプチャ

写真は、JETの事業所のEMC試験センター)

 

 内閣府の「再生可能エネルギー等規制等総点検タスクフォース」は、太陽光発電等の再エネ発電の電力を安定的に供給するための蓄電池の利用が求められているが、現行の系統連結のための安全基準、傾倒連結の技術要件(グリッド・コード)、その第三者認証制度が、いずれも硬直的で、蓄電池普及を妨げているとして、抜本的な改革を求める提言を公表した。特に、認証事業は経産省出身者が理事長を務める一般財団法人電気安全環境研究所(JET)が独占しており、認証コストも諸外国より10倍から数十倍の高コストを課していると指摘している。

 

 10日に開いたタスクフォースの会合では、日本での蓄電池普及を目指す電気自動車大手テスラの日本法人テスラモーターズジャパンの担当者が出席し、日本の蓄電池認証制度の課題を指摘した。

 

 同担当者の提出資料によると、国内で家庭用等の蓄電池導入促進のための補助金の要件が日本独自のJIS規格のみで、IEC等の国際規格を排除しているほか、安全性及び系統連結の製品認証が実質的にJET認証のみで、海外機器には不利な状況となっているとした。しかもJETが認証する試験内容の詳細がブラックボックス化している点等を指摘し、改善を求めた。

 

 さらに、安全基準であるJIS規格を認証する第三者認証機関は国内に複数あるが、系統連系規定に基づいた認証についてはJETが事実上独占しており、試験機関での競争原理が働かない仕組みとなっているという。さらに、JETでの認証取得費用が500万~1000万円かかるなど、海外に比べて極めて高い高コストを強いられている等を指摘した。

 

わが国での蓄電池の内外価格差。最大では1対3にも
わが国での蓄電池の内外価格差。テスラの場合で90%高に。最大では3倍にも(テスラ提出資料より)

https://www8.cao.go.jp/kisei-kaikaku/kisei/conference/energy/20231110/231110energy05.pdf

 

 こうした指摘を受けてタスクフォースは、蓄電池単体の安全基準の改革として、①国、自治体の補助金制度にJIS規格だけでなく、IEC等の国際基準を満たすものも受け入れるべき②経産省は、安全基準認証の独立性を明文化し、系統連系に必要なグリッド・コードの技術要件とを切り分けるべき③JETがJIS規格認証で、蓄電池の小さな部品変更でも、その都度、認証の再取得を要求する等の「JIS規格の要件を超えた」過大な要求をしていることの是正、を求めている。

 

  グリッド・コード(系統連系技術要件)の改善としては、① グリッド・コードへの適合性確認に必要な期間の短縮・費用の適正化を政府が確保すること。併せて、系統への接続費用等の妥当性の確認②自己認証による個別協議の省略制度の導入(諸外国で実施済み)③JETによる系統連系の第三者認証の独占的体制を改善すること。そのために、経産省はJET独占の原因を解明し、他の認証機関も参入できる仕組みにすべき。さらに、公正取引委員会は、独占禁止法上問題となる事実が認められた場合は、厳正・的確に対処すべき ④ JETの認証要件の透明化 ⑤蓄電池出荷時の全数試験の不要化等をあげている。

 

 会合に出席した経産省の担当者は「JETは経産省の所管ではない」等と述べて、同省の責任がないことを強調した。だが、JETの理事長は歴代、経産省出身者が就任している。現理事長の中村幸一郎氏は原子力畑出身で、東京電力福島第一原発事故時には当時の原子力安全保安院審議官を務めていた経歴を持つ。

 

 JETは会合での指摘に対して、同機関が実施している系統連系の認証は「円滑に系統連系を進めるための任意の認証制度であり、現状はJETのみが認証制度を提供しているが、他の認証機関も参入することは可能」と指摘。さらに、定置用小型燃料電池システムに関する系統連系認証には、JET以外に2つの認証機関が参入しているほか、定置用蓄電池の安全性に関する認証制度には、JET以外に3機関が参入していると説明している。https://www8.cao.go.jp/kisei-kaikaku/kisei/conference/energy/20231110/231110energy10.pdf

 

 JETの理事には東京電力OB等も名を連ねており、これまでも、既存電力の電力の系統連系を優先的に維持するための組織、との指摘があった。経産省資源エネルギー庁自体、そうした体制の維持を重視した行政を展開してきたとされる。今回の内閣府タスクフォースの提言に対して、正面から対応するかどうかが注目される。

https://www8.cao.go.jp/kisei-kaikaku/kisei/conference/energy/20231110/agenda.html

https://www8.cao.go.jp/kisei-kaikaku/kisei/conference/energy/20231110/231110energy07.pdf