HOME10.電力・エネルギー |国際エネルギー機関(IEA)。COP28での「再エネ3倍増、省エネ2倍増」合意は、必要削減量の3割。さらに3倍増必要と指摘。日本の「自国より他国での削減貢献」論は「勝手解釈」(RIEF) |

国際エネルギー機関(IEA)。COP28での「再エネ3倍増、省エネ2倍増」合意は、必要削減量の3割。さらに3倍増必要と指摘。日本の「自国より他国での削減貢献」論は「勝手解釈」(RIEF)

2023-12-11 17:09:50

IEAスクリーンショット 2023-12-11 164735

上図は、㊧から2つ目のグラフが、COP28での「再エネ3倍、省エネ2倍」の効果。一番㊨のネットゼロ目標には大きく届かない=IEA分析より)

 

  国際エネルギー機関(IEA)は10日、国連気候変動枠組み条約第28回締約国会議(COP28)で、日本を含む約130か国が再生可能エネルギー発電を2030年までに現状より3倍増、エネルギー効率を同2倍増とすることで合意した効果について、公約した各国が公約を実現しても、地球の気温上昇を産業革命前から1.5℃以内に抑制するパリ協定の目標達成には届かないとする分析を示した。同公約について日本の伊藤信太郎環境相は「自国での達成ではなく、途上国を含めた全体での達成」と、国内での取り組みに消極的な姿勢を示したが、IEAは各国での「3倍増」が公約との立場で、環境相の発言は「勝手解釈」ということになる。

 

 IEAは先に公表した「世界エネルギー見通し(World Energy Outlook2023)」において、「1.5℃目標」達成のために、2030年までに取り組むべき5つの主要政策を掲げている。①グローバルな再エネ能力の3倍増②省エネ改善の2倍増③メタン排出量の75%削減に向け、石油・ガス産業等の化石燃料産業のコミットメント④途上国・新興国経済へのクリーン投資3倍増のための大規模なファイナンスメカニズムの構築⑤新規建設および排出対策のない石炭火力発電の閉鎖を含む化石燃料使用の秩序立った減少を確保するための政策コミットメントーーである。

 

 このうち、COP28期間中、約130か国が①と②について合意したわけだ。各国の合意に加えて、③については民間の石油・ガス会社50社が30年までのメタン排出削減で合意している。これらの企業は世界の石油生産の40%を占め、石油・ガス生産の35%を占める。

 

伊藤環境相
伊藤環境相

 

 伊藤環境相は、COP28で日本政府として「再エネ3倍増、省エネ2倍増」に賛同したことに関連し、「日本国内でも3倍増を目指すのか」と問われ、「太陽光発電の導入に伴う森林などの環境破壊の問題もあり、必ずしも3倍にできる容量があるとは考えていない。なるべく伸ばそうと思っているが、明日や来年に3倍に増やすことはできない」と、公約とは異なる発言をしていた。https://rief-jp.org/ct4/141101?ctid=71

 

 同氏は、「世界で3倍にすることは必要で、発展途上国に技術供与するなどして進めたい」と述べ、新興国の排出量削減を日本が支援し、創出されたクレジットの一部を日本政府が取得する「2国間クレジット制度(JCM)」の普及を進める考えを示した。しかし、途上国のクリーンエネ投資等は、IEAが示した5つの主要政策の④に相当し、現時点では合意されていない。

 

 世界の発電に占める再エネ発電の割合は、2022年で13%。今年は各国の政策の後押しもあって、約3分の1の増加が期待されている。2015年から22年にかけては、年率平均11%増で伸び、8年間で倍増している。今回の公約となる30年までの7年間で3倍増にするには、各国がこぞって政策支援を再強化すれば、達成は視野に入る可能性がある。

 

 賛同した130か国は合わせて世界の温室効果ガス(GHG)排出量の約40%を占めるほか、エネルギー消費の37%、グローバルGDPの56%をそれぞれ占める。そこでIEAは、今回公約した国々と石油・ガス企業が想定通りの削減活動を100%実践した場合の効果について、30年時点でGHG削減量はCO2換算で4G㌧(40億㌧)に達するとの推計を示した。

 

 22年の世界のGHG排出量は53.8G㌧だったので、現状比で7.4%の削減で、必要とされる排出ギャップの30%分に留まる。これでは「1.5℃」に抑制する削減経路には届かず、さらに3倍ほどの削減が必要になるとしている。日本の環境相は「現行からの3倍増」でさえ消極的な姿勢を見せたが、求められるのはさらにその3倍増ということになる。

https://www.iea.org/news/iea-assessment-of-the-evolving-pledges-at-cop28