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「グリーン・トランスフォーメーション(GX)」の2024年度予算は概算要求の半分に圧縮。再エネ1割。「化石燃料関連」はほとんど盛り込まず、別途、エネルギー特別会計で充当(RIEF)

2024-03-14 00:09:24

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  岸田政権が2050年ネットゼロに向けて掲げる「グリーン・トランスフォーメーション(GX)」政策への2024年度の予算配分は、概算要求時の半分にとどまり、特に、くらし(住宅・建築物) 、自動車、半導体の各分野への対策費は担当省庁の要求額が全く盛り込まれなかったことが、気候政策シンクタンクの分析でわかった。脱炭素化のための気候・エネルギー予算も予算全体の1.6%だけ。米欧の「脱炭素戦略」に比べ大きく見劣りする。一方、化石燃料分野等への資金配分は3兆円規模のエネルギー対策特別会計で対応し、GX予算にはほとんど盛り込んでいない。GXへの機関投資家等の批判を避けるため、「化石燃料支援」をGXから外して温存するかのようだ。

 

 GX関連予算の分析は、気候政策シンクタンク「Climate Integrate」が13日、「日本政府の気候・エネルギー予算とGX投資の現状」と題する報告書で公表した。

 

 それによると、2024年度の政府予算113兆円のうち、気候・エネルギー予算総額は1兆7534億円。政府予算全体の1.6%に留まる。GX推進対策費は、この気候・エネルギー予算の34.4%(6036億円)となる。

 

 同予算総額の省庁別の内訳は、経済産業省が72%と全体の7割以上を占め、次いで環境省11%、国土交通省 8%、文部科学省6%と続く。「GXは経産省のための資金源」という評価を裏付ける配分内容だ。分野別にみると、分野横断(電 源立地交付金、GX 推進機構出資金等)が21%、省エネ21%、 化石燃料20%、原子力14%、蓄電池13%、再エネ8%、資源循環2%の内訳となる(下図の内円)。このうち、 省エネ分野では、くらし(住宅・建築物)、航空・船舶、自動車等に配分されてい る。

 

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 予算総額のうち、GX推進対策費の割合(上図の外円・紫)は、蓄電池、分野横断(電源立地交付金、GX推進機構出資金等)の分野で高い。再エネは蓄電の3分の1。化石燃料、原子力、くらし(住宅・建築物)、 自動車などの分野へのGX資金の配分は極めて限られている。これは、後で見るように、別途、エネルギー対策特別会計の予算が配分されるためだ。全体では省エネ、化石燃料、分野横断の3分野が6割を占める。再エネ予算は全体の約1割で、化石燃料割合の半分でしかない。

 

 24年度のGX推進対策費は、概算要求時の1兆2608億円から6036億円に半減した。2022~2023年度(2兆9720億円)に比べても大幅な減額だ。中でも、くらし (要求額、1484億円)、自動車(同1417億円)、半導体(同1078億円)の各分野のGX推進対策費は担当省庁の要求額が全く盛り込まれなかった。その結果、24年度のGX推進対策費の3分の1以上は、蓄電池関係予算が占める形となった。

 

 化石燃料分野への政府資金は、総額3兆円規模のエネルギー対策特別会計の予算が別途、確保されており、2022~2024年度のGX推進対策費は同分野にはほとんど割り振られていない。したがって、GX予算だけを見る限りは、「化石燃料離れ」をしたかにも見える。しかし実態は、「 政府が化石燃料に対して引き続き多額の予算を特別会計で確保する一方で、GXに対する機関投資家からの批判を踏まえて、両者の棲み分けがなされている可能性を示唆している」(報告書)となる。

 

 報告書は、24年度予算を加えた2022~24年度の3年間のGX投資額(計3兆5756億円)のペースが今後も続くとした場合、10年間で投じられる政府のGX資金は約12兆円になると指摘。岸田政権が公約する「20兆円の政府資金」に届かない。特に、再エネに対する 政府投資額は10年間の計画に比べて極端に少ない状況になる。「再エネよりも化石燃料温存」を目指すGX政策の狙いが早くも浮き出た格好だ。

 

 2022~2024年度の政府のGX投資の実績額を踏まえた今後10年間の分野別政府投資額の実現割合の推計では、 ①非化石エネルギー分野3.1%②産業構造転換・省エネ分野22.7%③資源循環・炭素固定技術等分野0.3%でしかない。経産省主導のGX資金配分では、②の既存産業界の「延命」に資する産業構造転換・省エネ分野に優 先的に予算が振り向けられ、エネルギー転換を実現する①や、資源転換を可能にする③への資金供給は、既存産業界の権益に抵触することから、十分な資金を回さない能性が高い。

 

 しかし、世界を見渡すと、米国政府はインフレ抑制法(IRA)等により、日本円換算で10年間で約50兆円(年平均5兆円)、ドイツ政府は4年間で約33兆円(年平均8兆円)の脱炭素支援、エネルギー転換への公的資金投入を表明、推進している。これらの比べると日本政府のGX投資額20兆円(年平均2兆円)は規模が小さいだけでなく、既存産業の延命に重点が置かれており、報告書は「(このままでは)日本企業が脱炭素市 場における国際競争において優位性を得られない可能性がある」と指摘している。

https://climateintegrate.org/wp-content/uploads/2024/03/Japans-Spending-Plans-for-Climate-and-Energy-JP.pdf

https://www.enecho.meti.go.jp/committee/financial/budget/pdf/cmtfinbgt2024_001.pdf