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国連が日本の震災・原発事故による“同期的”なインフラ機能の失敗を指摘(Kyodo)
2011-06-02 16:59:33
国連の国際防災戦略は、3月11日に発生したマグニチュード9.0の東日本大震災による津波の被害を受けた東京電力福島原発の一連の事故によって、日本のインフラの脆弱さが明らかになったとの報告(2011年国連世界防災白書)をまとめた。報告書は、日本のインフラは貧しい途上国のような状況で崩壊しており、なぜそうなったかの教訓を導きださねばらないと、と指摘している。
報告された2011年の国連世界防災白書は、「3月11日の地震とその影響による大津波、そして突発的な原発事故は、同時発生的な失敗のように思える。すなわち、多くのセクターの同時崩壊である」と表現している。さらに、今回の災害は、福島第一原発の使用済燃料の冷却に必要な電源供給を含め、日本の電力供給システムの重要な部門がなぜ崩壊したのかを指摘するとともに、1986年のチェルノブイリに相当する事故に発展することになってしまった原因であるバックアップシステムが使用不可能になった経緯も指摘している。
白書は、震災によるすべての心的、物理的被害とコストは現時点では計り切れないとしながらも、震災の直後の状況の中で、なったのは、日本のような精練され、かつ非常時に対して万全の備えをとっていたと思われる社会でさえ、インフラへの物理的な大きな被害が起きると、即座に貧しい途上国を連想させるような状況に陥ってしまうということである。どういう状況かというと、大規模な食料不足と水不足、住宅喪失、物流の崩壊などである。
同様のことが、オーストラリアの2011年の洪水、ニュージーランドのクライストチャーチでの大地震、そして今回の東日本大震災で起きており、先進国といえども災害に対しては、いまだ非常に脆弱であるということを思い知らされたと、指摘している。また今回の日本の事故は、突然のリスクと新たな脆弱性というものが、現代社会が依存している技術システムの複雑性と相互依存性とも、深くかかわっていることも強調した。
白書は、1995年の阪神淡路大震災についても言及している。同震災は約6千人の死亡者を出した。死亡者の80%は、崩壊した家屋の中で発見された。耐震性を強化した新たな住宅への移行努力は目下進行中である。多くの被災者は生きた状態で閉じ込められ、その多くが地震による給水システムの破損により広がった火災が原因で亡くなった。
2003年には、2013年までに耐震性のない住宅を約10%減らすことを目標とする改造計画がスタートした。その計画では、1981年以前に建てられた建築物を査定する費用の3分の2と、それらの建物の改修費用の23%を政府が補助金として支給される施策が盛り込まれた。しかし、計画が始まるまでの時点で改修済の住宅が5万から6万あったのに対して、2009年時点ではそれを下回る約3万1000戸の住宅と1万5000のビルのみが改修されただけである。
白書は「日本のように、十分に目標を絞り込み、用意周到の政策配慮をほどこし、かつ災害リスクについての高い認識(実際に地震が発生した経験)があっても、個人の住宅所有者に災害リスク低減のために投資させることは課題となっている」と指摘している。また、日本のような高い準備があり、それが多くの命を救った面もあるが、一方で、各国政府は、発生確率が低いが高い犠牲を伴うイベントについての、起こりうる最大の損失をカバーする緊急対策や保険適用をほとんど実施していないと、指摘している。
一方で、災害による死亡率は減りつつあるが、災害に伴う損害額の数字はすべての地域で増えている。これは低中所得国にとって大きなダメージを与えるものであり、富裕国にとってさえ、その富に匹敵する大きさになる場合がある。例えば、東アジアにおける洪水やサイクロンによって死亡する確率は過去20年に比べるとはるかに低くなってるにも関わらず、OECD諸国の高所得国においては、1980年に比べて、洪水による経済損失のリスクは160%。熱帯地方のサイクロンの被害は262%も増えている明らかになっている。
こうしたデータを受け、白書は3月11日の日本の原発事故が意味することは、政府は今後予測される災害リスクに対して、充分な時間と資源を投資するべきである、としている。
United Nations International Strategy for Disaster Reduction
http://www.unisdr.org/we/inform/publications/19846
報告された2011年の国連世界防災白書は、「3月11日の地震とその影響による大津波、そして突発的な原発事故は、同時発生的な失敗のように思える。すなわち、多くのセクターの同時崩壊である」と表現している。さらに、今回の災害は、福島第一原発の使用済燃料の冷却に必要な電源供給を含め、日本の電力供給システムの重要な部門がなぜ崩壊したのかを指摘するとともに、1986年のチェルノブイリに相当する事故に発展することになってしまった原因であるバックアップシステムが使用不可能になった経緯も指摘している。
白書は、震災によるすべての心的、物理的被害とコストは現時点では計り切れないとしながらも、震災の直後の状況の中で、なったのは、日本のような精練され、かつ非常時に対して万全の備えをとっていたと思われる社会でさえ、インフラへの物理的な大きな被害が起きると、即座に貧しい途上国を連想させるような状況に陥ってしまうということである。どういう状況かというと、大規模な食料不足と水不足、住宅喪失、物流の崩壊などである。
同様のことが、オーストラリアの2011年の洪水、ニュージーランドのクライストチャーチでの大地震、そして今回の東日本大震災で起きており、先進国といえども災害に対しては、いまだ非常に脆弱であるということを思い知らされたと、指摘している。また今回の日本の事故は、突然のリスクと新たな脆弱性というものが、現代社会が依存している技術システムの複雑性と相互依存性とも、深くかかわっていることも強調した。
白書は、1995年の阪神淡路大震災についても言及している。同震災は約6千人の死亡者を出した。死亡者の80%は、崩壊した家屋の中で発見された。耐震性を強化した新たな住宅への移行努力は目下進行中である。多くの被災者は生きた状態で閉じ込められ、その多くが地震による給水システムの破損により広がった火災が原因で亡くなった。
2003年には、2013年までに耐震性のない住宅を約10%減らすことを目標とする改造計画がスタートした。その計画では、1981年以前に建てられた建築物を査定する費用の3分の2と、それらの建物の改修費用の23%を政府が補助金として支給される施策が盛り込まれた。しかし、計画が始まるまでの時点で改修済の住宅が5万から6万あったのに対して、2009年時点ではそれを下回る約3万1000戸の住宅と1万5000のビルのみが改修されただけである。
白書は「日本のように、十分に目標を絞り込み、用意周到の政策配慮をほどこし、かつ災害リスクについての高い認識(実際に地震が発生した経験)があっても、個人の住宅所有者に災害リスク低減のために投資させることは課題となっている」と指摘している。また、日本のような高い準備があり、それが多くの命を救った面もあるが、一方で、各国政府は、発生確率が低いが高い犠牲を伴うイベントについての、起こりうる最大の損失をカバーする緊急対策や保険適用をほとんど実施していないと、指摘している。
一方で、災害による死亡率は減りつつあるが、災害に伴う損害額の数字はすべての地域で増えている。これは低中所得国にとって大きなダメージを与えるものであり、富裕国にとってさえ、その富に匹敵する大きさになる場合がある。例えば、東アジアにおける洪水やサイクロンによって死亡する確率は過去20年に比べるとはるかに低くなってるにも関わらず、OECD諸国の高所得国においては、1980年に比べて、洪水による経済損失のリスクは160%。熱帯地方のサイクロンの被害は262%も増えている明らかになっている。
こうしたデータを受け、白書は3月11日の日本の原発事故が意味することは、政府は今後予測される災害リスクに対して、充分な時間と資源を投資するべきである、としている。
United Nations International Strategy for Disaster Reduction
http://www.unisdr.org/we/inform/publications/19846