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BankTrack。グローバル金融機関の化石燃料投融資レポート。2022年の「ワーストバンク」はカナダのRBC。日本の3メガバンクはMUFG(6位)、みずほ(9位)、三井住友(10位)(RIEF)

2023-04-18 00:58:08

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 国際環境金融NGOがグローバル金融機関の2022年の化石燃料投融資分析レポートを公表した。ロシアのウクライナ侵攻で化石燃料依存の危うさが表面化したが、逆に昨年は石炭、ガス代替等の需要が増え、化石燃料産業の収益は増大した。その影響で同産業への投融資が多かった米銀大手は融資額を減らしたが、カナダのRoyal Bank of Canada(RBC)はタールサンド増産向けの融資を伸ばし、初の「ワースト化石燃料ファイナンス銀行」となった。日本勢では三菱FJフィナンシャル・グループ(MUFG)6位、みずほフィナンシャルグループ9位、三井住友フィナンシャルグループ(SMBC)10位と、3メガバンクがそろってワースト10に入った。

  レポートは「Banking on Climate Chaos」とのタイトル。環境金融NGOのBankTrack(オランダ)が定期的に調査・実施している。今回で14回目となる。対象は世界の60の大手銀行で、石炭、石油・ガス、タールサンド、北極圏開発等の化石燃料関連事業への投融資額を調べた。2022年単年度の投融資額とともに、パリ協定以降の16年からの累積投融資額も公表した。

 2022年単年度では、前年4位だったRBCが一気に1位にランクアップした。前年トップのJPMorgan Chaseが前年比約4割減となったほか、Citi等の主要米銀も軒並み融資量を減らした一方で、RBCは前年比4.2%増の421億㌦(約5兆6400億円)と、JP Morgan Chase(392億㌦=2位)を抜いた。3位は(388億㌦)のWells Fargo。

2022年の化石燃料投融資の上位10行
2022年の化石燃料投融資の上位12行

 22年の化石燃料産業は、ロシアのウクライナ侵攻でグローバルなエネルギー市場の価格が高騰する中で、「ウィンドフォール・プロフィット(棚ぼた利益)」を享受。産業全体では4兆㌦の記録的な収益をあげた。これに対して、レポート対象となった60行全体の化石燃料関連投融資額は6730億㌦(約90兆1000億円)で前年比約16%減で、パリ協定翌年の16年からの7年間では最も少なかった。

 レポートはこの理由として、手元資金が豊富になった化石燃料産業は、金利の上昇もあって、必要な事業拡大資金等を銀行から借り入れるよりも、利益の増大で増えた自己資金等でまかなったためとの見方を示している。

 ただ、7年間合計でみると、60行の投融資総額は5.5兆㌦(約737兆円)に達した。また22年の投融資額は減ったが銀行によっては増えているところも少なくない。レポートは「化石燃料投融資を増大させた15機関」のランキングも公表。トップは米銀のPNCバンク(ピッツバーグ拠点)の前年比77.34%増で、2位が中国のICBCの23.74%増、この中に日本のSMBCも4.21%増で9位にランクされている。

2022年に化石燃料かん連投融資を増額させた15の金融機関
2022年に化石燃料関連投融資を増額させた15の金融機関

 パリ協定以降の化石燃料投融資総額の動きを見ると、16年から19年までの4年間は増大を続けたが、新型コロナウイルス感染が広がった2020年は、前年比8.6%減と初めて減少に転じた。その後、21年は1.5%増と横ばいし、昨年22年に16%減となった。23年以降、投融資額が減り続けるのか、あるいは再度、増額に向かうのかが、今年23年の注目点だ。

 「ワースト化石燃料ファイナンス銀行」の汚名を冠せられたRBCは、カナダに豊富にあるタールサンド向け投融資増(48億㌦)に加え、シェール油・ガスのフラッキング向け投融資増(74億㌦)を軸に、化石燃料全般の事業へのファイナンスを増やした。他のカナダ銀行も同様に投融資額を増やしている。BankTrackでは「カナダの銀行は化石燃料にとってのラーストリゾート(最後の拠りどころ)になった」と評している。

 米銀大手はそろって、投融資額を減らし、ランクを下げたものの、依然、絶対的な投融資額の多さでは群を抜く。22年単年度では、トップはRBCだが、2位のJPMorgan以下、3位Wells Fargo、4位Bank of America、5位Citiと上位を占めている。その次の6位にMUFGが続くという順位だ。7年間の総投融資額ではJP Morganが4341億㌦で断トツに多い。2位のCiti(3329億㌦)より1000億㌦以上上回っている。

パリ協定以降の2016~22年の化石燃料投融資総額のランク
パリ協定以降の2016~22年の化石燃料投融資総額のランキング

 

 化石燃料の分野ごとの投融資状況では、60行は22年中、化石燃料産業の上位100社の事業拡張に対して総額1500億㌦の投融資を実施した。主なファイナンス先は、TC Energy、TotalEnergies、Venture Global、ConocoPhillips、Saudi Aramco等の大手エネルギー会社だ。銀行60行のうち49行は「ネットゼロ排出量」にコミットしているが、実態は投融資量は減っていないことがわかる。BankTrackは「ネットゼロ宣言の49銀行はこれら化石燃料拡張ファイナンスの81%を提供している。彼らの『宣言』は疑わしい」と指摘している。

 タールサンドの大手企業は22年だけで210億㌦の投融資を獲得している。全体でワーストワンとなったRBCに加えて、TD、Bank of Montreal等のカナダ大手銀行で同産業向けのファイナンスの89%をカバーした。パリ協定以降では総額8620億㌦に達する。BankTrackは「タールサンドは単にCO2排出量が多いだけではなく、カナダの先住民の人権や居住権限を無視した開発事業となるなど、社会的な問題を引き起こしている」と指摘している。

 北極圏での石油・ガス開発へのファイナンスでは、中国のICBCや中国農業銀行(ABC)、中国建設銀行(CCB)等が22年だけで29億㌦の投融資を実施した。22年の投融資はコロナ禍の影響の継続等やエネルギー市場の混迷の影響もあって、新規開発へのファイナンスは限られたが、継続案件には米銀を中心に26の銀行が投融資を続けている。

 南米アマゾンでの石油・ガス開発事業へのファイナンスではスペインのサンタンデール銀行が主導している。米銀Citiが続いている。22年中の投融資額は7.69億㌦。海洋での石油・ガス開発事業へのファイナンスでは、欧州の仏BNP Paribas、Crédit Agricoleのほか、日本のSMBCグループが上位のファイナンス供給者だった。22年中の投融資額は340億㌦。

 LNG向けファイナンスは全体で230億㌦で、前年の152億㌦から50%近い増額となった。同ファイナンスには米銀のMorgan Stanley やCiti、Goldman Sachs等のほか、日本のみずほ、SMBCも上位投融資金融機関に列挙されている。市場ではウクライナ侵攻でパイプラインの天然ガスから、LNGへの転換が広がったことを受けた投融資増とみられる。

 石炭鉱業向けは130億㌦で世界的規模の30の鉱業企業に投融資された。うち87%は中国の China CITIC Bank、China Everbright Bank、Industrial Bank等が供給した。石炭鉱業向け投融資は2016年以降減少を続けているが、21年から22年にかけては、カナダと米銀の投融資額はやや増えている。

 石炭火力発電向け投融資は、世界の大手電力会社30社向けのうち97%が中国の銀行によって供給されている。これらの電力会社への22年中の投融資額は290億㌦。ただ、石炭火力向けの投融資に加わっている銀行数は21年の29行から、22年は20行に減っている。

https://www.banktrack.org/article/new_report_canadian_bank_rbc_the_1_financier_of_fossil_fuels_world_s_biggest_banks_continued_to_pour_billions_into_fossil_fuel_expansion

https://www.banktrack.org/download/banking_on_climate_chaos_2023/banking_on_climate_chaos_2023.pdf