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グローバル市場のESG債、累積発行額4兆㌦(約560兆円)に到達。全体の6割以上がグリーンボンド。トランジションボンドは全体の0.3%。ほぼ日本市場だけの「異質ボンド」に(RIEF)

2023-06-16 00:36:11

ESGキャプチャ

 

  グローバル市場でのグリーンボンド等のESG債の累積発行額が、今月に入って4兆㌦(約560兆円)台に乗せた。3兆㌦台となったのが昨年7月なので、ほぼ11カ月で1兆㌦分を積み上げたことになる。このうちグリーンボンドが2.5兆㌦で過半の約6割を占める。次いでソーシャルボンドとサステナビリティボンドがそれぞれ17、16%となっている。ESG債市場は、昨年は米国を中心とした金利引き締めが続く中で債券市場全体の発行減の影響を受け、2011年以来、初の前年比2割近い減少となった。だが、今年に入ってグリーンボンドを軸に再び発行増となっており、年間でも過去最高の発行額を達成する可能性がある。

 

 英Environmental Financeが公表した。ESG債市場が累計で1兆㌦に到達したのは2019年末。2007年に最初のグリーンボンドが発行されてから12年以上を費やした。しかし、その後、発行ペースが上昇し、1年半で2兆㌦に、1年で3兆㌦に。そして今回の1年未満での4兆㌦台乗せと、増加ピッチが高まっている。

 

 ESG債の種類別では、立ち上がりからESG債投資を引っ張ってきているグリーンボンドが全体のほぼ3分の分の2を占める。特に今年に入ってから5月までの同ボンドの発行額は2500億㌦超と堅調で、過去最高発行を記録した2021、同22年の2000億㌦水準を上回っている。

 

ESG債の種類ごとの累積発行額の内訳
ESG債の種類ごとの累積発行額の内訳

 

 今年のグリーンボンド発行は、欧州を中心とする各国のソブリングリーン国債がリード役となっている。イタリア(100億ユーロ)を筆頭に、EU(60億ユーロ)、ドイツ(52.5億ユーロ)、アイルランド(35億ユーロ)、英国(30億ポンド×2回)等だ。また公的金融機関の発行も、欧州投資銀行(50億㌦+50億ユーロ)、ドイツ復興金融公庫(KfW)の30億ユーロ×2回等と大口の発行が相次いでいる。

 

 次いでソーシャルボンドが6890億㌦(全体の17%)、環境・社会両分野に資金を充当するサステナビリティボンドが6890億㌦(同16%)。これら3種類のESG債だけで全体の85%と太宗を占める。これらのボンドは、資金使途を特定のESG事業に充当する「UoPボンド」とも呼ばれる。これとは別に、企業のサステナビリティ指標の改善を条件として、調達資金を一般事業に充当できるサステナビリティリンクボンド(SLB)は2170億㌦で全体の5.40 %。

 

 SLBの今年の発行割合は5月までで6.6%と若干回復しているが、21年の9%、22年の8.4%のシェアからは明らかに伸び悩んでいる。SLBの仕組みは企業が設定する重要業績指標(KPI)の達成目標(SPTs)の達成状況を評価するものだが、KPIsやSPTsの設定が企業の任意であり、目標を達成できなかった場合の罰則も企業によってさまざまで、共通性を欠く等から、投資家の人気が高まらない状況が続いている。

 

ESG債の発行種類別の年間構成比の推移
ESG債の発行種類別の年間構成比の推移

 

 EFのデータではトランジションボンドについても分類している。だがその総額128億㌦で、シェアは0.30%と極めて低い。トランジションの定義が定まっていないうえに、高炭素集約企業をグリーン化するという「野心」は評価されるとしても、その移行の技術リスクや政策変更リスク等が高いことから、国際的な投資家からは、SLB以上に敬遠されているのが実情だ。

 

 こうした状況下で、日本政府がグリーン・トランスフォーメーション(GX)政策として、GX移行国債を初めて発行する見通しで、グローバル市場の投資家は「興味半分、懸念半分」で日本の動向を注視している状況だ。ただ、日本のGX移行債は、円建て発行で、国内の年金、地方銀行等を中心に売り込まれるため、購入した国内投資家は「バイ&ホールド」として満期まで保有するとみられる(塩漬け化)。グローバル投資家は「関心」は示すものの、「ジャンク債投資家」以外は、購入はしないとみられる。

 

 発行体別の、これまでのESG債の発行高では、最も発行量が多いのは世界銀行(国際復興開発銀行=IBRD)の1820億㌦(約25兆800億円)。次いで、EUの1620億㌦、米ファニーメイ(1470億㌦)、仏社会保障基金(Cades  : 1210億㌦)、EIV(924億㌦)となっている。

https://www.environmental-finance.com/