米第二位の公的年金CalSTRS 低炭素インデックスファンドに25億㌦配分。再エネ会社への投資も増額。パリ協定踏まえ、低炭素社会への移行リスクに対応(RIEF)
2016-07-29 00:21:41
(写真は低炭素投資戦略を語るCalSTRSのCIO、Christopher J. Ailman氏)
米第二の規模を誇る公的年金のカリフォルニア州教員退職年金基金(CalSTRS)は、サステナビリティ重視の企業投資を増やすため、低炭素インデックスファンドに25億㌦を投資することを決めた。さらに再生可能エネルギー事業会社等への投資も従来の10億㌦から30億㌦に増額する。
CalSTRSは総資産1888億㌦を有する全米で有数の機関投資家。投資最高責任者(CIO)のChristopher J. Ailman氏によると、25億㌦の資金はMSCI ACWI Low Carbon Target indexに投じられる。https://www.msci.com/documents/10199/c64f0873-5818-4304-aaf2-df19d42ae47a
同IndexはMSCI ACWI Indexをベースに、低炭素社会への移行リスクを回避したい投資家向けに、世界の23の先進国と23の途上国から選んだ1786社(6月末現在)の株に投資している。主な投資先はApple、MicroSoft、Johnson & Johnson、GE、Amazonなど。
Ailman氏は「気候変動は市場にインパクトをもたらす。したがってわれわれは、先行的に投資し、超過リターンを得たいと考えている」と述べている。
今回のCalSTRSの決定は、昨年12月にニューヨーク州の共通退職年金基金(New York State Common Retirement Fund)が20億㌦をゴールドマンサックス・アセットマネジメントにカスタムメードの低炭素カーボン株インデックスでの運用を委託したことに続く動きだ。
CalSTRSの株投資総額は約1000億㌦に達するので、25億㌦のサステナビリティインデックス運用はごく一部でしかないともいえる。しかしAilman氏は、今回の投資のパフォーマンスが良ければ、投資額を大幅に増やしたいと語っている。
NYSCRFに次ぐCalSTRSの低炭素株運用への資金配分の増額は、パリ協定に沿って各国の温暖化規制が強化され、サステナビリティ推進型企業の市場価値が高まるという判断に基づいている。各国の規制が進むと、同じ産業でも、低炭素対応の有無が企業価値を左右する可能性が高まる。
ただ、まだ米国の年金基金等の主要な機関投資家の投資戦略にサステナビリティや低炭素化を明確に盛り込んでいるところは少ない。全米最大の年金基金であるカリフォルニア州公務員退職年金基金(CalPERS)は、現時点ではCalSTRSのような低炭素Index投資を打ち出していない。
代わりに、CalPERSのスポークスマンのJoe DeAnda氏によると、CalPERSは投資先企業の温室効果ガス排出量の削減について、企業に直接働きかけるエンゲージメント活動によって、現行よりも50%引き下げることを目指していると説明している。
欧州では低炭素投資は、機関投資家の間でかなり行き渡っている。たとえばスウェーデンの公的年金基金の運用機関であるAP4は、2012年からタイ炭素戦略を投資戦略の中に取り込んでいる。150億㌦の全株投資資産のうち22%の約30億㌦強は低炭素戦略に基づいて投資銘柄を選別しているという。