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年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)、米CalPERS、英USSと3者連携し、短期志向の投資判断からの決別と、長期価値創造の企業支援・投資運用を強化する共同宣言を公表(RIEF)

2020-03-09 08:53:20

GPIF22キャプチャ

 

  年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)は米最大の公的年金のカリフォルニア州職員退職年金基金(CalPERS)、英国第二の民間年金で大学教職員の年金USSと連携し、短期志向の市場の動向に対抗して、長期価値の創造に取り組む運用を推進する共同宣言を公開した。ESGを完全に投資判断に統合し、投資先への株主投票行動を透明化するなどによって、長期価値の創造にコミットする企業を支援、資産運用機関との関係強化を優先する。

 

 宣言は、「サステナブル資本市場のための共同のパートナーシップ(Our Partnership for Sustainable Capital Markets)」と題している。まず、自らの年金運用機関としての最大の責任を、何世代にもわたる家族に退職後の金融的安定を提供すること、と改めて位置づけた。そのうえで、「これまで何十年にもわたって金融の安定を重視しており、『次の数年』の投資リターンを最大化するような取り組みはしない」と短期志向との決別を宣言した。

 

CalPERSのオフィス
CalPERSのオフィス

 

 3機関はその理由として、短期のリターンを目指すことは、ポートフォリオに及ぼす潜在的な破滅的システミックリスクを無視することにもなる、とした。たとえば、Moody’s Analyticsのデータによると、気候変動リスクだけで2100年までに世界全体で69兆㌦の経済的富を破壊する恐れがある、との事例を紹介。長期投資する資産保有機関として、何世代に対しても貢献する役割を担っており、より包摂的(inclusive)でサステナブルで、ダイナミックで、強く信頼できる経済の維持が重要、と述べた。

 

 安定な長期投資の必要性に加えて、その投資判断にESG考慮を含めることの重要性も強調した。ESG評価の視点は他の資産運用機関にも広がっており、TCFD提言やセクターごとのESB評価を整備したSASB(サステナブル会計基準機構)等のフレームワークに沿った判断をする企業や資産運用機関が増えている動きに歓迎を示した。その一方で、市場全体では、さらなる課題が残るうえに、短期志向のスタンスが強く残っている、と懸念も示した。

 

USSキャプチャ

 

 こうした環境下で、3機関は資産保有機関として、短期志向の市場の圧力にさらされながら、長期の価値創造に取り組む企業等に対して、長期資本の財務管理者(Stewards)として支援する、と宣言した。またESG考慮を投資運用全体に取り入れる資産運用機関との関係強化もうたった。また、投資の領域にサステナビリティの役割を強めることに疑問を呈する向きもあるが、3機関は「彼らは次第に少数派に転じることを理解すべき」と警告した。

 

 同時に、サステナブルな価値の創造とは、ビジネスに政治的な判断を持ち込むことでも、道徳的シグナルを照らすことでもない、と説明。長期投資を維持する3機関の責務に、投資先の企業もパートナーとしての資産運用機関も、ともに連携すること、と位置付けた。そうした判断のうえで、投資先の企業と資産運用機関の両方に対して、経営戦略の再考と、TCFD提言などに沿って情報開示を高度化することを求めた。

 

 共同声明は、企業活動、投資活動における長期的な価値創造への取り組み、さらにESG要因の取り込みを求め、そうした企業・運用機関との連携強化を宣言するとともに、それに反する短期志向の企業・運用機関を投資対象や取引先から排除する姿勢を鮮明にしたといえる。

https://www.gpif.go.jp/en/investment/Our_Partnership_for_Sustainable_Capital_Markets.pdf