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「三井物産の海外でのLNG開発・アンモニア混焼事業等は、パリ協定・ネットゼロ目標と不整合」とする環境NGOによる同社株主金融機関へのエンゲージメント要請に、5社が対応と回答(RIEF)

2022-10-25 15:16:17

Mitsuibussanキャプチャ

 

 三井物産の海外での新規の液化天然ガス(LNG)開発事業や石炭火力発電所へのアンモニア混焼導入事業等はパリ協定の目標達成やネットゼロ目標と整合しないとして、環境NGO5団体が、同社の主要株主38金融機関に、見直しのエンゲージメントを要請していたが、これまでのところ5社がエンゲージメントの実施意思を回答した。NGOが公表したもので、回答の中には、確実な目標設定と化石燃料依存をどう減らすかという実行プランの開示を求めるものもあるという。

 

 三井物産の株主金融機関への要請を行ったのは、環境NGOの FoE Japan、気候ネットワーク、「環境・持続社会」研究センター(JACSES)、メコン・ウォッチ、環境NGO 350.org Japanの国内5団体。

 

 NGOらによると、三井物産はパリ協定の目標遵守とネットゼロ目標の達成に、社としてコミットしている。だが、新規油田・ガス田の開発を排除する、あるいは何らかの形で制限する方針は策定していない。実際に、ベトナム(ブロックBガス田-オモン・ガス火力)およびモザンビークで新規ガス事業の開発を進めようとしている。インドネシアでも、ウダバリ・ガス田の新規開発とボルワタ・ガス田の増産を計画し、タングーLNG事業を拡大する予定だ。

 

 しかし、国際エネルギー機関(IEA)が示した経路(ロードマップ)では、2050年までにネットゼロを達成するには、2021年以降の新規の石油・ガス田開発は不要と指摘している。NGOらは、三井物産が進める化石燃料ガスの新規事業は、この経路から完全に逸脱していることになると指摘している。

 

 また、同社は、LNGプロジェクトの新規開発を排除、制限する方針を持たず、むしろLNG事業をビジネスチャンスと捉えている点にも懸念を示している。具体的には、オーストラリアでバロッサLNG施設の開発を、ロシアではアークティックLNG 2プロジェクトを進めている。IEAが示す経路では、2021年時点で建設中または計画段階の多くのLNG液化設備は不要としている。

 

 さらに、同社の方針では、スコープ3の排出量目標が販売した製品の使用には適用されていないため、石油・ガス製品の最終消費における排出を制限するものになっていない点も指摘している。IEAの経路に沿うと、石油・ガスからの総排出量は、2020年から2030年の間に23%減少(石油27%、ガス17%)する必要があるとしている。

 

 NGOらはこうした点を指摘して、同社の取り組みを修正するよう同社の株主金融機関に対して、エンゲージメントを求める要請書を8月30日に送付した。10月14日までに7社から回答があった。うち2社はエンゲージメントへの回答を控えるという内容だったが、残り5社はエンゲージメントを行った、あるいは行う、との回答だったとしている。

 

 NGOらは三井物産が、発電所の閉鎖時期を後ろ倒しし、温室効果ガスの排出をロックインしてしまう間違った対策であるアンモニア混焼を、モロッコのサフィ石炭火力発電所において導入しようとしている点も問題視している。

 

 三井物産のこうした取り組みの問題点を指摘したうえで、NGOらは同社に対して、パリ協定1.5℃目標と整合する事業取り組みに改めるよう求めるとともに、機関投資家が同社が抱える気候変動関連リスクを深刻に受け止め、三井物産に対しエンゲージメントを実施・強化するよう求めていく、としている。

https://sekitan.jp/jbic/2022/10/17/5634

https://sekitan.jp/jbic/en/2022/08/31/5042

https://sekitan.jp/jbic/2022/08/31/5589