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内外の環境NGOの4団体。今年の株主総会で、3メガバンクと三菱商事、東京電力、中部電力の6社に対して、国際的に整合する気候対策の強化を求める株主提案提出(RIEF)

2023-04-11 14:24:32

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  内外の環境NGOの4団体は11日、国内の3メガバンクと、三菱商事、JERA株主の東京電力ホールディングスと中部電力の6社に対して、気候変動対策の強化を求める株主提案を提出したと発表した。同提案では、パリ協定の目標と整合する中期および短期の温室効果ガス(GHG)排出削減目標の設定を含む事業計画、2050年ネットゼロへの移行に向けた取り組みの情報開示を求めている。

 

 昨年の株主総会シーズンでは、日本企業に対する気候関連の株主提案は過去最多だったが、今年も環境NGOだけでなく、海外の機関投資家や地方自治体からの提案も予想されており、提案数は増大しそうだ。株主提案をしたのは、環境NGOの豪マーケット・フォース、FoE Japan、気候ネットワーク、レインフォレスト・アクション・ネットワーク(RAN)の4団体と、その代表者を含む個人株主ら。

 

 NGOらは共同声明の中で、3月に公表された国連の気候変動に関する政府間パネル(IPCC)の第6次統合報告書が、産業革命前からの気温上昇を1.5度以内に抑えるには、GHG排出量を2035年までに19年比で60%減らす必要があると指摘した点を重視。そうした気候対策の強化がなければ、2100年までに約3.2℃上昇が見込まれるとし、国連のグテーレス事務総長の「気候時限爆弾が刻々と時を刻んでいる」との危機感を共有した。

 

内外の環境NGOの6社に対する株主提案の概要
内外の環境NGOの6社に対する株主提案の概要

 

 また日本が議長国を務めるG7広島サミットを前に、日本政府が化石燃料(LNG等)投資の必要性を求めたり、化石燃料の利用継続を前提とした技術導入を推進していることに対し、G7加盟国からも反発を招いていると述べた。そのうえで「民間企業の気候対策は政府方針に大きく影響を受けるが、国際社会で事業展開し、信頼を得るには業界あるいは企業独自の気候対策が求められる」と企業の脱炭素経営への転換を求めた。

 

 今回の株主提案の対象とした6社については、「国内外で化石燃料事業への投融資および関与を継続している。特に、LNG火力のパイプライン開発や発電所の新設、既存の石炭火力発電所の稼働を延命させるアンモニア・水素の混焼技術の推進等は大きな問題」と共通の課題を指摘した。

 

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 このうちメガバンク3社について、マーケット・フォースの日本・エネルギーファイナンスキャンペーン担当の渡辺瑛莉氏は 「3メガの気候関連方針等は、国際エネルギー機関(IEA)のネットゼロシナリオや、ネット・ゼロ・バンキング・アライアンス(NZBA)等のイニシアチブに沿っておらず、2050年のネットゼロへの道筋として信頼性を欠く。新規の石油・ ガス開発事業への支援継続は、海外の金融機関に比べ大きく遅れている」とした。

 

 RAN日本代表の川上豊幸氏も「気候対応には土地利用セクターも重要。NZBAガイドラインでは炭素集約分野とされる農業分野での排出量や集約度の削減目標の設定を求めているが、3メガは行っていない。木質バイオマス発電所のGHG排出係数は燃焼時に石炭火力より高いにもかかわらず、木質バイオマス燃料のCO2排出量は適切に情報開示されていない」と情報開示不足を問題視している。

 

 三菱商事に対しては、 マーケット・フォースのアジア・エネルギーファイナンスキャンペーン担当の福澤恵氏が「同社の気候目標や情報開示は、2050年のネットゼロ目標の達成に実行可能と投資家が結論づけるには全く不十分。同社のScope3排出量(3億8100 万㌧)は、英国、フランス等の各国の化石燃料の年間排出量を上回る」と述べた。

 

 東京電力HDと中部電力についてはマーケット・フォースのエネルギーファイナンスアナリストの鈴木幸子氏が「両社と、両社の合弁による高炭素排出企業のJERAは、新規の化石燃料事業に投資をしており『ネットゼロ企業』と名乗ることは許されない。これら企業は、資本配分を気温上昇を1.5℃以下抑える道筋と整合させるなど、移行計画の信頼性を示す必要がある」としている。

 

 また気候ネットワークのプログラム・コーディネーターの鈴木康子氏は「JERAは低炭素社会を目指すと表明している。サステナブルなエネルギーへの切り替えは簡単ではないとの意見もあるが、欧米の同業企業は着々とゼロエミッションへの取り組みを進めている。既存の火力発電設備にアンモニアや水素を混焼させて排出削減を狙う日本のやり方は、科学的にも経済的にも疑問視される」と述べている。

https://www.kikonet.org/info/press-release/2023-04-11/Shareholder-proposals-2023