HOME10.電力・エネルギー |国際協力銀行(JBIC)と3メガバンクが協調融資のインドネシア・チレボン石炭火力2号機事業。日本企業出資企業が地元県知事に贈賄判明。OECDルール違反と、環境NGOがJBICの融資停止を要求(RIEF) |

国際協力銀行(JBIC)と3メガバンクが協調融資のインドネシア・チレボン石炭火力2号機事業。日本企業出資企業が地元県知事に贈賄判明。OECDルール違反と、環境NGOがJBICの融資停止を要求(RIEF)

2023-08-21 18:15:59

JBIC003キャプチャ

 

 国際協力銀行(JBIC)と3メガバンク等が協調融資で支援をしているインドネシアのチレボン石炭火力発電2号機事業拡張計画で、丸紅とJERAが出資する事業会社の幹部社員が、現地の元県知事に対する贈賄行為に関与していたことが、元県知事の収賄・マネーロンダリング事件の裁判で明らかになった。裁判は18日、被告人の元県知事に有罪の判決が出された。これを受けて、インドネシアと日本の環境団体は、JBICと同行を所管する日本の財務省に対して、公的輸出信用機関(ECAs)であるJBICが、贈賄に関連する事業に融資するのは「OECD贈賄勧告」に反するとして、融資の速やかな停止と、既存融資の強制期限前弁済をするよう申し入れた。

 

 財務省に申し入れたのは、インドネシアの環境団体のラペル(Rapel, Rakyat Penyelamat Lingkungan:環境保護民衆)、
WALHI西ジャワ、インドネシア環境フォーラム(WALHI)のほか、日本の環境団体のFoE Japan、「環境・持続社会」研究センター(JACSES)、メコン・ウォッチ、気候ネットワーク。

 

 インドネシア西ジャワ州のチレボン石炭火力発電事業拡張計画(2号機。100万kW)をめぐっては、事業主体の丸紅が2012年7月に操業を開始したチレボン1号機について、昨年11月に、早期運転終了の方針を打ち出した。だが、2号機については、継続され、事業拡張を進めている。今年3月、インドネシア汚職撲滅委員会(KPK)は2号機事業を含む一連の収賄・マネーロンダリング事件に関連して、元チレボン県知事を起訴、裁判となっていた。https://rief-jp.org/ct10/130076?ctid=

 

 18日の判決では、2号機事業をめぐる収賄容疑を含めて、被告の元県知事に有罪判決を言い渡した。同裁判の公判での証人の証言や被告の元県知事の陳述等から、2号機事業の事業者であり、JBIC等からの建設資金の直接の借入人であるチレボン・エナジー・プラサラナ社(CEPR、丸紅35%、JERA10%出資)の元上級幹部(一人は元社長)が、元知事への贈賄行為に関与していたことが明らかになった。

 

 報道等によると、CEPR社の贈収賄工作では、同社の幹部2人が元県知事に対し、CEPRが申請した2号機の建設許可の手続きを滞りなく行い、さらに2号機建設に対するデモへの対処支援を求めて10億ルピアを渡した。被告の元県知事は3億ルピアを自らが得たほか、金額は不明であるものの、県知事や県警察局長、県検事局長、県軍管区司令官で構成する「Forkopimda」にもCEPRから資金が直接支払ったと証言している。

 

 CEPRの社長らは、建設事業者の現代建設の関係者とチレボン県知事を仲介した。これを受けて、県知事は県のDPMPTSP(統合投資許認可サービス局)に対して、CEPRの許認可手続きを早める手助けをするように命じた。その後、現代建設の担当者からDPMPTSPにも直接5000万ルピアが支払われたという。

 

 県知事は地元住民の抗議を沈静化するためとして「運営資金」を要求した。この「資金」は、現代建設から架空のコンサルティング業務の契約金(100億ルピア)として支払われたとされる。県知事は義理の息子が運営する会社を現代建設との間のコンサル業務に入れるよう要請。現代建設から同社に対して、2017年6月から2018年10月の間、4回に分けて70億2000万ルピアが支払われたという。

 

 両国の環境NGOらは、こうした金銭の流れは明白な贈収賄だと指摘。JBICの同事業への融資については「公的輸出信用と贈賄に関するOECD理事会勧告」(OECD贈賄勧告)に違反しているとして、財務省とJBICに対して、同事業に対する貸付実行の停止措置を速やかにとること、これまでに実行した貸付については強制期限前弁済の措置をとることを求める要請書を提出した。

 

 2号機事業については、環境汚染や周辺での漁業への影響等を理由に建設反対運動を続けている地域住民に対する嫌がらせや脅迫などの人権侵害行動が続いているほか、石炭火力事業を拡張することによる気候変動対策への逆行などが指摘されている。インドネシアのジャワ・バリ電力系統では、今後、発電設備が過剰で40〜60%もの供給予備率(2021〜2030年)を抱えることが予想されており、チレボン2号機事業の妥当性にも疑問が示されている。

https://foejapan.org/issue/20230818/13915/