HOME9.中国&アジア |日本政府主導の「アジア・ゼロエミッション共同体(AZEC)」首脳会合。「脱炭素への多様な道筋」強調。ガス維持、原発、水素、アンモニア、CCUS等。「現代版大東亜共栄圏」か(RIEF) |

日本政府主導の「アジア・ゼロエミッション共同体(AZEC)」首脳会合。「脱炭素への多様な道筋」強調。ガス維持、原発、水素、アンモニア、CCUS等。「現代版大東亜共栄圏」か(RIEF)

2023-12-19 13:28:24

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  日本政府が主導する「アジア・ゼロエミッション共同体(AZEC)」構想の首脳会合が18日、東京で開かれた。日本のほかオーストラリア、東南アジアの計11カ国の首脳が参加し、トランジション燃料として天然ガス及び LNGを位置づけたほか、小型モジュール炉(SMR)等の原子力エネルギー、水素、アンモニア、CCUSの利用等の移行技術での協力推進をうたう共同声明を採択した。同声明に対しては、アジアを中心に、米、豪も含む環境NGO、市民団体等が「化石燃料維持よりも再エネ中心のクリーンエネシステム」を求める共同行動を展開した。

 

 会合は首相官邸で、ASEAN首脳との会合に引き続いて開催された。主催した岸田文雄首相は、「2050年カーボンニュートラル(脱炭素)に向けた大きな目標は共有するが、そこに向けては多様な道筋を尊重するということだ。もう一つは、脱炭素と経済成長、そしてエネルギー安全保障、この三つを両立させることが重要であることを確認した」と記者会見で強調した。

 

 首相の指摘は、AZECが共同声明で「アジア、特にASEAN地域はイノベーションを通じ、経済成長、エネルギー安全保障及び強靭性と両立する形で、カーボンニュートラル/ネットゼロ排出に向けた脱炭素化を促進する」としたうえで、そうした取り組みに際して「産業構造、社会的背景、地理的条件、発展の段階と速度等の各国の状況や出発点の違いに応じて、脱炭素への多様かつ現実的な道筋がある」との指摘を盛り込んだ点を踏まえている。

 

 声明は、アジアでの「各国の異なる状況に合わせた脱炭素化の手法」として、SMR等の原子力エネルギーの使用のほか、水素、アンモニア、eメタン、CCUS等の化石燃料温存型のトランジション(移行)技術での協力促進を掲げたほか、天然ガスとLNGについては「パリ協定の気候目標と整合するトランジション燃料」と位置付けた。再エネ等を軸としたクリーンエネ転換を推進するEU等とは異なる路線を強調した形だ。

 

 しかし、国際エネルギー機関(IEA)によると、パリ協定が掲げる「1.5℃目標」を達成するためのネットゼロエミッション(NZE)シナリオでは、今後の石油・ガスの新規開発は不必要で、50年にはエネルギー供給に占める再エネの割合を約7割に引き上げる必要があると明確に指摘している。ガスについても、ネットゼロに向けて段階的に縮減するという意味での「トランジション」対象であり、現行の水準で使い続けることが可能な「トランジション燃料」ではない。

 

AZEC開催に反対の抗議運動をする若者たち=首相官邸近くで
AZEC開催に反対の抗議運動をする若者たち=首相官邸近くで

 

 パリ協定の趣旨を「すり替える」ような表現を盛り込んだ共同声明に対して、環境NGOらは「アジアにおける化石燃料の利用をグリーンウォッシュしている」と批判声明を出した。

 

 「Asian People’s Movement on Debt and Development(APMDD)」のコーディネーター、リディ―・ナクピル氏は「グローバルサウスのコミュニティは、石炭、ガス、石油事業が及ぼす影響に長年苦しんできた。われわれは、ガス、水素、アンモニア、CCSプラントなど、日本政府と日本企業が推進する『誤った気候対策』によって、化石燃料の無い未来への機会が失われることを決して許さない。日本は利益追求よりも、人々と地球のニーズを優先すべきだ」と指摘している。

 

 「Center for Energy, Ecology, and Development(CEED)事務局長のジェリー・アランセス氏も「東南アジアはすでに再エネへの転換期を迎えており、1.5 ℃目標に沿ったエネルギー転換への道を示す大規模な再エネ計画がある。しかし、日本は化石燃料に基づくエネルギーを維持することに固執し、脆弱な立場にある私たちのような国の最善の利益をあからさまに無視している。日本がASEANとの友好50周年を記念した会合を開き、AZEC声明を出して、私たちの『気候の墓穴』を掘ってくれるとは、日本はなんて友好的なんでしょう」と皮肉るコメントを出した。

 

https://www.mofa.go.jp/mofaj/p_pd/ipr/pageit_000001_00123.html

https://www.mofa.go.jp/mofaj/files/100596806.pdf