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「2050年ネットゼロ」実現に向け、政府は「地球温暖化対策推進法」改正案を閣議決定。「実質ゼロ目標」を理念として盛り込み。ロードマップは定めず。進捗状況の確認制度なし(RIEF)

2021-03-02 13:18:45

MOE001キャプチャ

 

 政府は2日、「2050年温室効果ガス排出量実質ゼロ」を目標に盛り込んだ地球温暖化対策推進法(温対法)改正案を閣議決定した。改正案では「基本理念」を新たに設け、パリ協定の「2.0℃目標」「1.5℃目標」を踏まえて「50年ネットゼロ」の目標を明記した。ただ、EUや英国等の気候変動法とは異なり、同目標を達成するためのロードマップは盛り込まれていない。

 

 「ネットゼロ」達成については、脱炭素社会を「人の活 動に伴って発生する温室効果ガスの排出量と吸収作用の保全及び強化により吸収される温室効果ガスの吸 収量との間の均衡が保たれた社会」と位置付けた。ただ、2050年の目標に向けて、どのような政策を講じて、温室効果ガスの削減を効率的に進めるのかというロードマップは併記されていない。

 

 例えば英国の気候変動法では、長期目標に向けて中期目標を設定、それをさらに毎年の予算措置に反映させて、国民に進捗状況が「見える化」する仕組みだ。進捗状況についても独立委員会が科学的データを踏まえて評価し、政府に勧告する体制をとっている。今回の法改正はそうした「見える化」や「サイエンスベースド(科学に基づく)」チェック&バランスよりも、日本の官僚が好きな「国民運動型」のようだ。

 

 法案ではネットゼロ社会の実現のために、都道府県及び指定都市等が地方公共団体実行計画を策定する。同計画に基づいて自治体が促進区域を定め、太陽光発電事業等の事業導入を認定する制度を新設した。同認定地区では、導入促進のため、自然公園法や農地法などの許可手続きのワンストップ化や、環境影響評価(環境アセスメント)の手続きの解除等を可能にする。

 

 また企業の脱炭素経営を促進するため、企業の温室効果ガス排出量に係る算定・報告・公表制度について、電子システムによる報告を原則化する。これまで開示請求の手続を経なければ開示されなかった事業所ごとの排出量情報を、開示請求の手続なしで公表される。だが、排出量の情報開示は、現行の事業所単位のままで、企業単位での排出量開示を法的責務にする措置は避けた。

https://www.env.go.jp/press/files/jp/115711.pdf

https://www.env.go.jp/press/files/jp/115712.pdf