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サウジアラビアのムハンマド皇太子、2030年までに再エネ50%、100万本植林を展開。「サウジ・グリーン・イニシアティブ」と「中東イニシアティブ」を宣言。原油減産には言及せず(RIEF)

2021-04-02 23:38:17

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  サウジアラビアの実権を持つムハンマド・ビン・サルマン皇太子は、同国の気候変動対策として、2030年までに電力の50%を再生可能エネルギーに切り替え、100万本の植林も展開して、CO2排出削減と吸収の両方に力を入れると発表した。同皇太子はこの取り組みを「サウジ・グリーン・イニシアティブ」「中東・グリーン・イニシアティブ」と名付け、間もなく正式に宣言する。同国だけでなく、中東全体の温暖化取り組みとして推進したい考えという。

 

 (写真は、サウジは原油・ガス大国であるだけでなく、再エネ大国でもある)

 

 サウジは世界第二位の石油生産国。皇太子は、温暖化促進の主因である化石燃料資源の石油・ガスの生産削減・輸出減には言及しなかった。 「グローバルな石油生産のリーダーとして、気候危機の戦いを進める責任の分担は十分に理解している」と述べるにとどまった。同氏は、サウジが「石油・ガスの時代」を支えてきたように、今後は「(サウジは)よりグリーンな世界を築くグローバルリーダーになるだろう」とも語った。

 


 皇太子は、国を挙げて温暖化対策に取り組む理由として、同国自体、すでに深刻な気候変動の影響を受けている、と指摘した。砂漠化の広がりをはじめ、砂嵐等でサウジと中東諸国では年間130億㌦の経済的損失を計上しているという。また温暖化による大気汚染でサウジ国民の平均寿命が1.5年縮小する現象も起きているとした。

 

 こうした事態を克服するため、サウジの砂漠地帯の植生カバー率を高めるほか、温室効果ガス排出量を減らし、大気汚染や土地の劣化、海洋生態系の保全等の対応策を展開する。100万本の植林計画はその一環で、今後数十年をかけて、約4000万haの荒れ地の再生を目指す。現在の森林カバー地域を12倍増やすことになる。

 

 100万本植林計画が実現すると、世界の荒れ地回復目標の4%分以上に貢献するほか、グローバルな1兆本植林目標の1%をサウジだけで実現できることになる。また国土の30%以上に相当する約60万㎢分を保護地域として確保するとともに、海洋・沿岸地域の環境改善と生態系の保全を進める。


 CO2削減では2030年までに国内の電力消費量の50%を再エネ電源に切り替えるとともに、クリーン水素技術開発等でCO2排出量を130M㌧以上減少させる。また廃棄物についても埋め立てから廃棄物発電化を94%にまで高める。再エネ事業についてはすでに砂漠地帯での大規模な集光型太陽光発電事業を展開しているほか、風力発電にも力を入れている。http://rief-jp.org/ct4/67173

 

 さらにサウジ一国の「グリーンイニシアティブ」ではなく、「中東グリーンイニシアティブ」とすることも強調した。中東湾岸協力理事会(GCC)諸国と協調し、植林ではサウジ国内分とは別に400万本の植林を展開する。サウジ分を合わせた500万本の植林で、2億haの荒れ地が「緑の森」に転じることになる。世界最大規模の植林活動といえる。

 

 皇太子は「われわれは、経済を守るか、環境を守るかという選択は『虚偽の選択肢』として拒否する。気候活動は経済の競争力を高め、イノベーションを刺激し、高品質の数百万に上る雇用を創り出すのだ」と強調した。同皇太子の発表に対して、パキスタンのイムラン・カーン首相、国連気候変動事務局長のパトリシア・エスピノサ氏らは歓迎の声明を出した。いずれは、化石燃料の石油・ガスの減産・縮小・停止に向けたロードマップを示してくれることを期待したい。

https://www.spa.gov.sa/viewstory.php?lang=en&newsid=2208375