HOME8.温暖化・気候変動 |世界のノーベル賞受賞者101人が「世界気候リーダーズサミット」の首脳たちに向け「化石燃料不拡散条約(FF-NPT)」の締結を要請。気候変動は核兵器同様のグローバル脅威と指摘(RIEF) |

世界のノーベル賞受賞者101人が「世界気候リーダーズサミット」の首脳たちに向け「化石燃料不拡散条約(FF-NPT)」の締結を要請。気候変動は核兵器同様のグローバル脅威と指摘(RIEF)

2021-04-22 14:03:03

  気候変動は核兵器と同様のグローバル脅威であるとして、温暖化の元凶である化石燃料の地球上での使用を禁じる「化石燃料不拡散条約」の制定を求めて、101人のノーベル賞受賞者が公開書簡を、世界各国に向けて送った。平和賞を受賞したダライ・ラマ氏が主導する形で、日本からも5人の受賞者が名を連ねている。アースデイの22日、バイデン米大統領主催で開かれる「世界気候リーダーズサミット」に向けて提案した。

 公開書簡は、「産業革命以来の化石燃料の焼却が温室効果ガス排出量のほぼ80%を占め、温暖化加速の主因になっているうえに、化石燃料の採掘、精製、輸送、発電等によって、地域的な大気汚染や環境・健康被害等のコストを引き起こしている」と指摘。化石燃料依存の現在のシステムがグローバルにも、地域的にも持続可能でない、と強調している。

主唱者のダライ・ラマ14世。1989年に平和賞を受賞
主唱者でもあるダライ・ラマ14世。1989年に平和賞を受賞

 これらの社会的なコストは、とりわけ先住民や脆弱なコミュニティ等に負荷され、化石燃料産業が人権侵害を引き起こしている。また多くの人々の生存を尊重する形でのエネルギー供給にはつながっていない、とした。パリ協定の「1.5℃目標」の達成ができないと、世界は壊滅的な温暖化に見舞われると危機感を示した。

 しかし、依然、化石燃料業界は新規の事業を継続し、金融機関はそれらに資金を投じていると批判。国連環境計画(UNEP)の報告によると、このままでは2030年までに現状よりも120%以上も多い化石燃料が製造され、1.5℃目標は達成できないと懸念を示した。

 こうした状況を転換する解決策は明確だ、として「化石燃料を地中にとどめる」政策を、世界のリーダーが採択することを求めた。そのための国際協力として3点を提起している。

NPT001キャプチャ

 ①IPCCとUNEPが示す最も利用可能な科学に基づいて、石油・ガス・石炭の新規の生産拡大を終了する。

 ②気候変動への各国の責任と、依存度、移行能力を考慮し、公正で衡平な方法によって、現存の化石燃料生産を段階的に終了(フェーズアウト)させる。

 ③化石燃料に依存している各国経済の移行を支持し、グローバルに公正な移行を通じて、世界のどこででも再生可能エネルギーに100%アクセスできるよう、移行・転換計画に投資する。

 書簡は、現存の化石燃料システムはグローバルになっており、その解決にはグローバルなソリューションが必要として、「世界リーダーズサミット」は、そのために行動しなければならないとした。その第一歩として、「化石燃料を地中にとどめる(to keep fossil fuels in the ground)」ことを求めている。

 書簡に署名した日本の受賞者は、大隅良典氏(2016年生理学・医学賞)、利根川進氏(1987年医学賞)、中村修二氏(2014年物理学賞)、梶田隆章(2015年物理学賞)、天野浩(2014年物理学賞)の5氏。

  「化石燃料不拡散条約」設立のアイデアは、すでに英New Weather InstituteのAndrew Simms氏と、同サセックス大学のPeter Newell氏によって、2018年に提唱されている。

https://fossilfueltreaty.org/

https://fossilfueltreaty.org/nobel-letter