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異常高温が続く米大陸。森林火災増大で、オフセットクレジット用の森林も焼失。マイクロソフトやBP等が確保したCO2排出量オフセット分も「燃え尽きた」(RIEF)

2021-08-04 22:55:39

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  例年以上に高温が続く北米大陸で、異常乾燥による森林火災が各地で起き、マイクロソフトやBPなどが温室効果ガス排出量をカバーするために利用していたオフセット用の森林も火災に見舞われ、オフセット機能を喪失する事態が相次いでいる。「2050年ネットゼロ」に向け、企業のカーボンクレジット確保が急務となる中で、自然災害の猛威が人間側の知恵を上回る形でもある。

 

 カーボンオフセット用の森林火災が起きたのは、米オレゴン、ワシントンの各州。そのひとつは、ワシントン州の中北部にあるコルビル・インディアン居留地にある森林。7月に火災が発生した。同地の森林オフセットプログラムは、2016年以来、1400万クレジット以上を創出してきた。同州の自然資源局によると、BPだけで同事業から1300万クレジットを総額1億㌦以上で購入してきたとしている。

 

 BPは昨年12月には、コルビル・プロジェクトに関与してきたカーボンオフセット開発事業者のFinite Carbonの過半の株を取得、自らオフセット事業にも乗り出している。BPは、同プロジェクトの取引事業者等と、森林火災拡大を防ぐための協議を続けていることを明らかにしている。火災は一部地域で、今も続いている。

 

 オレゴン州のクラマス・イーストでの森林プロジェクトからオフセットクレジットを購入してきたマイクロソフトも、プロジェクトの対象森林のBootlegでの火災で、森林全体が劣化、オフセット力が低下する事態に直面している。クラマス・イーストの森林からは、2017年以来、80万クレジットを創出してきた。マイクロソフトは昨年、同地と隣接するクラマス・ウェストの両プロジェクトから24万クレジットを購入している。

 

燃える森林。CO2を吸収するよりも、結果的にCO2排出増に。
燃えるオレゴン州クラマスイーストの森林。CO2を吸収するよりも、結果的にCO2排出増に。

 

 マイクロソフトのカーボンプログラムマネジャーのElizabeth Willmott氏は、最近開いたクレジット関連イベントに出席、「われわれは森林オフセットを購入したが、今、それは燃えてしまった」と報告した。そのうえで、「だからと言って、自然ベースのソリューションから引き上げるつもりはない。何がリスクなのかを見極めるべきだ」と、温暖化のリスクが拡大していることを強調した。

 

 森林オフセットクレジットプログラムの場合、一本一本の木とクレジットがリンクしているわけではなく、対象地域全体から生み出されるクレジットを販売する形をとっている。その際、一定率については売却せず、予備のプールとして事業者が保有している。このためBPもマイクロソフトも、購入したクレジットが消失してしまったかどうかはまだ不明という。

 

 ただ、「ネットゼロ公約」をする企業が増える中で、森林クレジットへの需要も増大している。プロジェクトの中には、プールとしての確保分が減っているところも少なくないという。森林オフセットは火災リスクに直面するほか、干害による影響や、害虫等による枯死のリスクも抱えている。日本でも企業の排出削減の不足分をカバーするオフセットクレジットへの需要が高まるとみられているが、火災防止を含め、自然林の適正管理が不可欠といえる。

 

 コルビルとクラマス・イーストの両事業はいずれも民間ベースのクレジット事業。米カーボンレジストリー(ACR)に登録され、カリフォルニア州が運営する州のカーボン取引システムでオフセットクレジットとして活用されている。ACRによると、カリフォルニア州の取引では、全米29の州で展開される143の森林オフセット事業から年間約3000万㌧のクレジットが使われているという。

https://americancarbonregistry.org/

https://carbon180.medium.com/carbon180-supports-the-create-act-602978d5dc1d